我々がいるべき場所はJ1。
変幻グランパスは堅守アビスパを崩せるか (4ページ目)
名古屋にツキがあったのも確かだ。61分の同点ゴールは、相手DFのクリアボールがMF田口泰士の右腕に当たり、こぼれたボールを田口自らが拾ってシュートを決めたものだった。本来なら、ハンドの反則が適用されるべきプレーである。
しかし、そのワンプレーが勝敗を分けた要因のすべてではないだろう。
千葉は攻守両面で自らの武器を封じられ、なかなかリズムに乗ることができなかった。互いに長いボールを用いたことで、行ったり来たりが激しくなった試合は、名古屋にとっても本来望むものではなかったかもしれないが、そうした慌ただしい展開が、徐々に選手個々の能力(技術と言い換えてもいい)の差を浮き彫りにしていった。
すなわち、名古屋優位の展開である。佐藤寿が語る。
「ジェフは今まで積み上げてきたものを出せたから(シーズン終盤で)連勝できた。でも、やることがはっきりしているのでわかりやすい。逆にジェフは、システムも含めて、こっちがどうやってくるかはわからなかったのかもしれない」
こちらがチョキを出すと予想して、相手はグーを出してくるなら、パーを出せばいい。
もちろん、千葉がそこでチョキを出せるなら勝機はあったが、自らが目指すスタイルをシーズン終盤にようやく確立したばかりとあっては、チームとしても選手個人としても、そこまでのオプションは備わっていなかったということだろう。
選手個々の能力で優位に立つ、名古屋だからこそできた千葉封じだった。殊勲のハットトリックを決めたシモビッチは語る。
「90分間ゲームをコントロールしていたのは、自分たちのほうだった」
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