日本はプレッシングを誤解している。スペインの名将が斬るブラジル戦 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 しかし、ブラジルはスモールスペースでプレスを回避できるスキルが日本の選手たちよりも上だった。その精度の高さによって、次第にボールをつなぎ、リズムを生み出していく。一方で、ブラジルが日本の選手にプレスをかけると、日本の選手はそれを回避できない。単純な技術の差が浮き彫りになった。

 やがて、日本はプレッシングが機能しなくなる。前半10分、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定でのPK献上は不運だったが(プレー自体はファウルだが、それなら他にも適用されておかしくない場面があった)、守備は秩序を欠いていった。前線から激しく追い立てるだけになってしまい、その消耗は甚大だ。一方、バックラインは後方に残ったままで、前線との間にぽっかりとできたスペースを相手に使われることになった」

 エチャリはスペインの監督養成学校でライセンスを与える教授でもあるが、プレッシングについて大事な指摘をしている。

「プレスは強度ばかりが語られる。しかし、これは明らかな間違いだ。プレッシングで大事なのは、スペースをバランスよく支配することにある。

 まず、相手のボールの出どころにフタをする。最前線の選手はボールを奪うのが役目ではない。出どころにフタをし、ミスを誘発させることにある。そのためには、味方選手との連係とスペースの均衡が取れたプレッシングが欠かせない。

 なぜなら、ブラジルのようにスキルの高い選手を集めたチームを相手に、1人や2人が猛烈に寄せても、それによって空いたスペースを使われるだけだからだ。有能なチームは、むしろ相手のプレッシングを自陣に誘い込む。そうやって、ディフェンスラインの裏に広がるスペースを突いてくるのだ」

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