名手・荒木雅博が語る 山川穂高のGG賞初選出の妥当性「及第点どころか、ファーストミットの使い方など一級品」

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

荒木雅博が2024年度「ゴールデングラブ賞」受賞者を解説〜パ・リーグ編

 現役時代は守備の名手として鳴らした荒木雅博氏による「ゴールデングラブ賞」受賞者の守備力チェック。セ・リーグ編に続き、パ・リーグの9人についても解説してもらった。

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【二冠王・山川穂高が初選出】

── かつての松坂大輔投手や桑田真澄投手、浅尾拓也投手のように、守備が秀逸な投手が少なくなりました。そういう意味で、加藤貴之投手(日本ハム)のような「9イニング平均与四球1個以内」という投手を選出してもいいのでは? と思うのですが。

荒木 あくまで「9人目の野手」ということなのでしょう。今年初受賞のリバン・モイネロ投手(ソフトバンク)がパ・リーグの担当記者259票中76票で、小島和哉投手(ロッテ)が75票でした。このふたりだけ失策0で、守備率1.000でした。バントを含めた打球処理をきっちりこなして、さらにモイネロは防御率1位。「しっかり守りきる」という記者の評価なのでしょう。

── 捕手は、昨年の受賞者である若月健矢選手(オリックス)に代わり、甲斐拓也選手(ソフトバンク)が奪回しました。

荒木 盗塁阻止率こそ若月選手のほうが上ですが、甲斐選手はポップタイム(捕球してから二塁、もしくは三塁に送球し、野手が捕球するまでの時間)が早いですよ。日本シリーズを見ていても、ワンバウンドを確実にブロッキングして前に落とし、拾うのが早い。走者は塁に釘づけです。甲斐選手はキャッチング、リードを含め、座ってくれているだけで安定感と安心感を与えてくれる捕手です。

── 一塁手は山川穂高選手(ソフトバンク)が176票を集め、初めて受賞しました。「消去法だ」とか、「ネフタリ・ソト(ロッテ)のほうがうまい」という声も聞こえてきましたが。

荒木 これまで4度受賞の中村晃選手(ソフトバンク)に代わって、FAで移籍してきた山川選手が初受賞ですね。本塁打と打点の二冠王の本人も「一番無縁の賞だと思っていた」と謙遜していましたが、山川選手の守備は及第点どころか、ファーストミットの使い方など一級品ですよ。内野手からワンバウンド送球など、必要最低限の動きでさりげなくさばいています。とにかくグラブさばきが柔らかい。

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