なぜ立浪監督の中日は失速し、新庄監督の日本ハムは躍進したのか? 広岡達朗は「野球観の差」と一刀両断

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin

 型どおりの純粋培養なエリートと、型破りの天真爛漫(らんまん)な個性派──中日前監督の立浪和義と日本ハム監督の新庄剛志のふたりの指揮官の明暗は、くっきりと分かれた。

 9月18日に退任を発表し、3年連続最下位という不名誉な記録を打ち立ててしまった立浪監督。かたや今季2位と躍進し、クライマックス・シリーズ(CS)ファーストステージではロッテに勝利し、ファイナルに進出。CSファイナルこそソフトバンクに3連敗したが、今季の日本ハムの戦いぶりは賞賛に値するものだった。

 3年前、それぞれ古巣の球団の監督に就任し、チームを強くするために試行錯誤しながらやってきた。就任1年目、2年目はともに最下位と苦しんだ。だが今季、低迷する中日とは対照的に日本ハムはリーグ2位と健闘。なぜ、これほど差が出てしまったのか。ヤクルト、西武の監督として日本一3回を誇る球界の大御所・広岡達朗に聞いた。

今季2位と躍進した日本ハム・新庄剛志監督(写真左)と3年連続最下位となり退任した中日・立浪和義監督 photo by Koike Yoshihiro今季2位と躍進した日本ハム・新庄剛志監督(写真左)と3年連続最下位となり退任した中日・立浪和義監督 photo by Koike Yoshihiroこの記事に関連する写真を見る

【ただ若手を起用していただけ】

「立浪に関しては、正直、失望したよ。ショートというポジションは内野の要であり、監督業にも適していると思っていたが、例外もあるものだ。まあ、与田(剛)が監督の時から中核になった選手がひとりもおらず、世代交代の真っ只中で仕方ない部分はあったにせよ、固定化されない日替わり打線ではチームが強くなるはずがない。

 就任会見で『打つほうはなんとかします』と言っていたから期待して見ていたが、何も変わってない。いたずらにチームを引っかき回した感じだ。なによりチームがこんな状態であるにもかかわらず、なまじ客が入っているから、フロントは努力をせんのだろうな」

 中日の今シーズン主催の71試合(バンテリンドーム69試合、岐阜、豊橋2試合)で233万9541人と、前年度より観客動員数は11%増となった。ちなみに、230万人を超すのは2008年以来だという。

 パ・リーグ断トツの最下位に終わった西武にしても、前年度より観客動員は上回っており、かつてのように贔屓(ひいき)のファンを応援しに行くというよりは、飲食が充実しているボールパークへ遊びに行くという感覚が高まってきているのかもしれない。

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著者プロフィール

  • 松永多佳倫

    松永多佳倫 (まつなが・たかりん)

    1968 年生まれ、岐阜県大垣市出身。出版社勤務を経て 2009 年 8 月より沖縄在住。著書に『沖縄を変えた男 栽弘義−高校野球に捧げた生涯』(集英社文庫)をはじめ、『確執と信念』(扶桑社)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(ダ・ヴィンチBOOKS)など著作多数。

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