【日本シリーズ2024】ソフトバンク・山川穂高が振り返る好機での凡打 「何年やってもコンマ何ミリの差」
ソフトバンクはレギュラーシーズンで勝率およそ7割を誇る本拠地でよもやの連敗を喫し、2勝2敗のタイに持ち込まれた。
ホームベースが遠かった。悔やまれるのは0対1で迎えた6回裏の攻撃だった。先頭打者は日本シリーズ初出場初スタメンに大抜擢された4年目22歳の笹川吉康だ。怖いもの知らずの若鷹はレフト前ヒットを放ち出塁すると、一死後には二塁へ盗塁も決めてチャンスを拡大させた。当然、ベンチも満員の客席も一気に熱を帯びた雰囲気になる。
そして周東佑京がフルカウントから四球を選ぶ。つづく栗原は一ゴロに倒れるも二死二、三塁と一打逆転の場面となり、打席には4番・山川穂高がゆっくりと向かっていった。
日本シリーズ第2戦以降、ノーヒットのソフトバンクの4番・山川穂高 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【狙いが悪いわけではない】
山川はシリーズ第2戦で先制2ランを含む3安打3打点と活躍している。その後は無安打だが、近くで観戦する取材仲間も「ここで打てばMVPでしょうね」と、大歓声が沸き起こるなかで耳打ちしてきた。間違いなく"おいしい"場面だった。
決着は初球でついた。好投を続けるDeNA先発のアンソニー・ケイが投げたのは甘く入ったチェンジアップ。山川に迷いはなかったが、タイミングが合わなかった。カツンという木製バットの音は、力がこもってなかったように聞こえた。高々と上がったセンターフライ。ドームの熱が急速に冷める。
それは流れが変わったことを意味していた。7回表、DeNAの猛攻にあって0対5と突き放され、もはや万事休すの様相となってしまった。
試合後、帰宅する山川に声を掛けて立ち止まってもらった。あの初球を打ったセンターフライをどう考えているのか、率直に問うてみた。
「惜しかったですからね。あれをどう打つとかはないですよ。何年やってもコンマ何ミリの差。あれがちゃんと当たれば、たぶんバックスクリーンとか左中間に行くでしょうし。もちろん悔しかったですけど、狙いが悪いわけではないので......って感じです」
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著者プロフィール
田尻耕太郎 (たじり・こうたろう)
1978年生まれ、熊本市出身。 法政大学で「スポーツ法政新聞」に所属。 卒業後に『月刊ホークス』の編集記者となり、2004年8月に独立。 九州・福岡を拠点に、ホークスを中心に取材活動を続け、雑誌媒体などに執筆している。