髙津監督がもらした「あの子の成長もここで止まってしまうのかな...」から2年 高橋奎二が歩む大エースへの道 (2ページ目)
【落ち込みながら反省する】
髙津監督は「選手たちは少しずつ成長してくれればいい」と、若手についていつもこうコメントしていたが、2年前の春季キャンプでは、苦しむ高橋のピッチングに「あの子の成長もここで止まってしまうのかな......」と、初めて弱気な言葉を口にした。
しかし高橋は持ち前のど根性で、開幕二軍スタートも、6月に一軍昇格を果たすと目覚ましい成長を遂げ、オリックスとの日本シリーズでは第2戦でプロ初完投初完封勝利。そして前述したように、昨年自己最多の8勝を挙げ、日本代表にも選出されたのである。
「いつもニコニコしていますけど、内に秘めるものはすごくて、たとえばケガをした時や、うまくいかなかった時とか、『次はこうしよう』とちょっと落ち込みながら反省するのが彼のスタイルですよね。そこは今も変わっていない。彼の一番のよさは、誰にも負けたくないという負けん気の強さで、そういうプレースタイルはすばらしいところです」
高橋がWBCから戻ってきて、チームに合流した時に投手陣に与える期待について聞くと、髙津監督は「一番は元気に帰ってきてくれたらいいと思っています」と語り、こう続けた。
「WBCが彼にとってひとつ階段を上る、成長をうながす経験になってほしいですし、今年も含めていい野球人生になってくれたらいいなと。まだ入団して8年しか経っていないので、もっともっと伸びる可能性を秘めています。僕にとってはいつまでたっても、ヒョロヒョロした奎二ですけど、本当に大エースにしたいと思っています。今もフワフワしていますけど、どう接して、どういう教育をして、どういう技術を教えてやっていくのか。まだまだこれからも見守っていかなきゃいけない選手だと思っています」
はたして高橋は、指揮官の思いに応えることができるのか。WBCの経験を糧に、大エースへと成長することを願う。
著者プロフィール
島村誠也 (しまむら・せいや)
1967年生まれ。21歳の時に『週刊プレイボーイ』編集部のフリーライター見習いに。1991年に映画『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台となった野球場を取材。原作者W・P・キンセラ氏(故人)の言葉「野球場のホームプレートに立ってファウルラインを永遠に延長していくと、世界のほとんどが入ってしまう。そんな神話的レベルの虚構の世界を見せてくれるのが野球なんだ」は宝物となった。以降、2000年代前半まで、メジャーのスプリングトレーニング、公式戦、オールスター、ワールドシリーズを現地取材。現在は『web Sportiva』でヤクルトを中心に取材を続けている。
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