ただいま最多勝。ヤクルト小川泰弘が勝てる3つの理由

  • 津金一郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Nikkan sports

 6月29日の巨人戦で、ヤクルトのドラフト2位右腕・小川泰弘が、新人ながらハーラー単独トップに立つ8勝目(2敗)を挙げた。

 7回を投げて被安打7、与四球3で毎回のように走者を出したが、試合前の「負けないぞという強い気持ちを見せたい。ランナーを出しても粘り強く自分の力を出し切りたい」の言葉どおり、走者を背負っても低めを丁寧に突くピッチングで、巨人打線を1点に抑えた。

 公称171cm。実際はそれに満たないであろう小柄な小川が活躍できる理由は、ずばり精神面の強さである。「強敵なので少しでも引いたら負けると思って大胆にいった」という巨人戦後の小川の言葉からも強心臓ぶりはうかがえるが、バッテリーを組む中村悠平も、「ランナーを出してピンチになってマウンドに行くと、自分で何とかするという気迫がヒシヒシと伝わってきます」と太鼓判を押す。指揮をとる小川淳司監督にいたっては、「精神面が非常にすごい。マウンドでの立ち居振る舞いが素晴らしい」と、手放しの賞賛ぶりだ。

 ただ、プロの世界は強気なだけで結果を残せるほど甘くはない。負けず嫌いな気持ちだけで投じても、痛打を浴びるケースがほとんどだ。しかし、小川はメンタルの強さを、結果に結びつけている。その理由を中村は「普段の小川はマイペースで負けず嫌いですけど、野球になるとしっかり者になる」と説明する。

 ピンチを迎えたときの小川は、失点しないために最大限の注意を払うことができる。顔色ひとつ変えずに、状況や打者を見て牽制球を挟み、クイックモーションで投げ込む。牽制が特別上手なわけでも、クイックが目を見張るほど速いわけでもないが、並みの新人なら打者を抑えることばかりに気をとられて疎(おろそ)かにしがちなことを、小川はひとつも怠らない。

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