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「野球ばかりしているのでは...」の噂に反論 エナジックスポーツ神谷監督が力説する「うちは相当勉強しているよ」 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 沖縄の公立高校を鍛え上げてきた神谷監督は代名詞の機動力野球に加え、その高校独自の文武両道を追求することで知られる。たとえば55歳で美里工に赴任すると、熊本工や福岡工、佐世保実など九州の有名校を回り、工業高校ならではの文武両道を見つけ出した。

「第一種電気工事士などの資格を取れば、トヨタ自動車や神戸製鋼、東京ガスや東京電力など、錚々たる会社に高卒で入れるとわかったんです。しかも、周囲より給与も2、3割高い。資格を持っていて、野球部だったら引く手あまたなんです」

 当時の美里工業は、いわゆるヤンチャな生徒ばかりだった。部員たちは「甲子園を目指しているのに、なんで勉強ばかりさせるの?」と不満をこぼしたが、資格を1つ取ると自信を膨らませ、次も取ろうと意欲を示した。

 野球部は結果を残し、卒業生は有名企業に就職していく。「工業高校に行けば幸せになれる」という口コミが広まり、門をたたく新入部員が増えていった。

「進学を目指すことだけが、学ぶことではない。野球だけではもちろんメシが食えないので、将来生きる力をつけるために高校がある。私たちは野球を通して何ができるか。そこを考えた時に、その学校ならではの取り組みがあると思う」

【エナジック流の文武両道】

 2021年、エナジックスポーツは通信制として開校した。全日制は校舎の数や面積、職員の数など文部科学省の設けるハードルが高く、すぐにクリアできなかったからだ。

 2年後、3学年揃う頃には全日制も併設させようと計画し、野球部員は1年時から全日制のカリキュラムで授業を進めた。そして2024年、予定どおりにスタートする。

 それでも周囲には「通信制だから」と色眼鏡で見られ、校名から「野球ばかりしているのでは」と考えられがちだが、神谷監督は「うちは相当勉強しているよ」と自負する。

 たとえば朝6時の練習前、部員たちは約1時間前に起きて自習する。6時半まで練習して7時から朝食をとった後、再び勉強してから教室に行き、20分間英語のコミュニケーションを学んで9時10分の1時間目に臨む。

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