名コーチが論証。清宮、中村が
打てなかった原因は木製バットじゃない

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第8回

《カナダで開催されたU-18ワールドカップ(W杯)で日本代表は銅メダルに終わった。夏の甲子園で活躍した中村奨成(広陵)はもちろん、ドラフト注目の清宮幸太郎(早稲田実業)や安田尚憲(履正社)といったスラッガーたちが揃い、歴代最強の呼び声が高かったが、最後まで本来の力を発揮できずに終わった。金属バットから木製バットに変わり、その対応に苦しんだとも言われているが、はたして日本代表の打棒を阻んだものとは何だったのか? 近鉄、ヤクルト、巨人などで打撃コーチを務め、多くのスラッガーを育ててきた名コーチ・伊勢孝夫氏が解説する》

(第7回はこちら)

甲子園で大活躍だった中村奨成だが、W杯では通算25打数3安打と苦しんだ甲子園で大活躍だった中村奨成だが、W杯では通算25打数3安打と苦しんだ まず印象的だったのが、日本の各打者が外国人の投手のツーシームに対応できなかった点だ。アメリカはもちろん、カナダ、韓国の投手もツーシームを投げていた。日本でも、最近の高校生はツーシームを投げる投手がいるようだが、同じツーシームでも、国際大会に出てくるような投手は、球速が140キロ台後半と威力が違う。

 技術的なことを言うなら、ツーシームに対応するには、前足(ステップする方の足)のヒザを柔らかく使うことだ。言葉にするのは難しいが、動く変化球の多くはヒザ元から低めに落ちる。その軌道にバットを合わせるには、ヒザを柔らかく使わないとボールを捉えられない。

 プロの世界では「ボールは前足で捕まえる」という言葉があるほど、バッティングにおいて前足は重要なポイントである。10人打者がいれば、10通りの構えやスイングがある。しかし、"前足で捕まえる瞬間"というのはみんな一緒なのだ。バットにボールが当たる直前のシルエットといえば、理解してもらえるだろうか。

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