2019.11.14

北島康介の2冠よりも驚きだった
柴田亜衣の金メダル「これ五輪だよね」

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO

PLAYBACK! オリンピック名勝負―――蘇る記憶 第15回

2020年7月の東京オリンピック開幕まであと8カ月。スポーツファンの興奮と感動を生み出す祭典が待ち遠しい。この連載では、テレビにかじりついて応援した、あのときの名シーン、名勝負を振り返ります。

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 2004年アテネ五輪の競泳ニッポンは、男子平泳ぎ・北島康介の2冠獲得に引っ張られるように、競技6日目までにはほかの4種目でも銀1個、銅2個のメダルを立て続けに獲得した。そして最大の驚きだったのは、競技7日目の8月20日に、女子200m背泳ぎの中村礼子の銅メダル獲得に続き、女子800m自由形決勝で柴田亜衣が、五輪女子自由形で日本史上初となる金メダルを獲得したことだった。

アテネ五輪女子800m自由形で、金メダルを獲得した柴田亜衣 高校時代まで無名だった柴田は、01年に鹿屋体育大学に進んでからジワジワと力をつけ、02年にはパンパシフィック・横浜大会に出場。03年の日本選手権では400m4位、800m3位、1500mで2位を獲得して世界選手権に初出場した。しかし、400mは14位で、800mは13位。1500mは12位に終わっていた。

 だが、04年になると、そこから驚速で進化する姿を見せた。4月の日本選手権では400mと800mは2位だったが、この年から設定された派遣標準記録を突破し、2種目で五輪代表に選ばれた。

 もともと、この種目で期待されていたのは山田沙知子だった。山田は高校3年生の00年にシドニー五輪に出場して800mで8位になり、その後も記録更新を続けて自由形の中・長距離で第一人者的存在に成長していた。世界ランキングは02年の400m2位、800m5位が最高記録だったが、04年4月の日本選手権800mでは8分23秒68の日本新をマーク。同年の世界ランキング1位となり、アテネに臨んでいたのだ。

 それでも大会前になると、「柴田がいい」との声が伝わってきた。直前のサルディーニャ合宿から調子が上がってきていた柴田は、競技2日目8月15日の400m自由形でその評判を証明する泳ぎをした。午前の予選は、4月の日本選手権で出した自己ベストを0秒08更新する4分07秒63で4位通過。決勝では4分07秒51とさらに自己記録を更新し、山田にひとつ先着する5位になったのだ。

 その時点では、800mで柴田のメダルを予想する者は極めて少なかった。彼女が日本選手権で出していた記録は8分27秒61。たしかに好記録ではあるが、アテネ五輪には8分23~24秒台の選手が多く出場していたからだ。