箱根駅伝2025 2年前の主将・中西大翔が語る國学院大「三冠」の可能性「平林はもちろん、部屋っ子にも期待」
中西大翔(旭化成)インタビュー(後編)
3年前の箱根で、中西(右)は現在の副キャプテンの山本歩夢(左、当時1年)と襷をつないだ。photo by Nikkan Sports/AFLO
◆インタビュー前編>>2年前、直前のケガで最後の箱根を走れなくなった國學院大主将・中西大翔は「なんでこんな時に」と涙を流した
【最後の箱根を走れず、不完全燃焼】
2023年の第99回箱根駅伝、國學院大のキャプテンである中西大翔は、直前の故障のために12月31日に出走を断念、サポートに回った。いつもはプレイヤーとして走り、サポートされる側にいたが、箱根ではサポ―トに回ることで、その大変さを感じることができた。
「沿道での応援を含めて、タイム報告とか、こんなに大変なんだというのがわかって、これまでやってもらっていたことへの感謝の気持ちが生まれました」
往路から沿道で仲間のサポートをしたかったが、中西が表に出てしまうと復路で出走しないことがばれてしまうので、1月2日は寮でテレビ中継を見ながら応援した。3日の復路は、9区の4年生の坂本健悟(現・プレス工業)のスタート地点に行った。
「前日の2日は坂本が寮でいきなり倒れたので、その介抱をしていたんです。少し落ち着いたので、前日練習に行き、戻ってきた時に『僕のサングラスをつけて走ってほしい』と坂本に渡しました。復路は大混戦で早稲田大や法政大、創価大とかと競っていたんです。坂本には『少しでも上の順位で、10区の(佐藤)快成(現・4年)にラクをさせてほしい。僕の分まで頑張ってくれ』と伝えました」
坂本は区間10位で3位から7位に順位を落としたが、アンカーの佐藤が区間4位の好走を見せ、國學院大は総合4位になった。3位の青山学院大とは36秒差だった。
「1、2年生が6人走り、下級生の頼もしさをすごく感じましたし、次の箱根ではもっと上を目指せるチームになるなと思いました。結果は3位と36秒差の4位で、目標の3位内には届かなったので、それは自分の責任だと感じていました。目標を達成できなかったことへの責めは走れなかった自分にある。みんなを責めるのではなく、自分を責めてほしいというのは、箱根が終わってから報告会などでみんなに伝えました」
最後の箱根駅伝こそ走れなかったが、キャプテンとして過ごした1年間は、中西にとってどんな時間だったのだろうか。
「チームをまとめていくために、何が必要かというのを自分で考え、実行してきました。そのやり方が正しかったのかどうかはわからないですけど、下級生をはじめ、みんながついてきてくれた。みんなのおかげで僕は人間として成長することができたと思います。最後、箱根を走れなかった悔しさは残りましたけど(苦笑)」
今、競技者としての中西を駆り立てるものは、その時の悔しさだ。最後の駅伝を走れなかったからこそ旭化成でニューイヤー駅伝を走り、優勝したいという。
「最後の箱根を走れず、不完全燃焼で終わった感じがありました。だからこそ旭化成でニューイヤーに出て活躍したいと思い、今もその思いが強いです。ただ、入社して1年目、2年目と故障が続いてチームに貢献できていないので、来年こそは自分のシーズンにしたいと思っています」
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著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。