プロデューサー髙橋大輔の世界観がアイスショーで炸裂。世界選手権トップ10入りへ向け村元哉中と共に「まだ成長できる」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo News

【心に秘めたものを見せる演出】

 今回の「アイスエクスプロージョン」では、髙橋はキャストの筆頭であるだけでなく、プロデューサーという立場でも関わっている。つまり、ショー全体の演出。彼自身の色が強くにじみ出た舞台になったと言える。

「前回(2020年)は派手な演出だったんですけど、今回は趣向を変えたいなと」

 髙橋は、演出家としての視点で語っている。

「曲を選んでいる段階で、内の爆発というか、心に秘めたものを見せる演出をしたくて。オープニングからフィナーレまで、流れやストーリーがあるものにしようと。そこでグループナンバーを後半にもっていって、2部では(名前の)コールもなしに、流れでつながり、『もう終わってしまったの!』ってなるように。誰が滑っているかわからないという不安はあったので、先にオーダー票を出して。皆さんの意見ももらいながら、次に生かしていけたら」

 物語の疾走感にこだわる髙橋ならではの演出だ。

 冒頭、怒涛の音響と照明のなか、冷気が立ち込めるリンクにスケーターたちが入り乱れる。氷の世界が"爆誕"する風景に一気に引き込まれる。髙橋から荒川静香にスポットを切り替える演出は、場面展開の心地よさとこれから始まる物語を予感させるだろう。連なった物語に目が離せない。

 なかでも、髙橋のスケートは際立つ。一つひとつの動きが鍛え抜かれているからだろう。エッジは深く鋭く、体のひねり方や腕の角度ひとつをとっても、細部の深度に違いが見える。

 音を拾うリズム感も、今さらだが極まっている。村元との『Love Goes』やジェイソン・ブラウンとのグループナンバーは、フィギュアスケートの神髄を感じられるはずだ。

「世界観を大事にしたかったので、スケーターのしんどさをあまり考えず、グループナンバーをひとりふたつ滑っているなど、かなりハードな内容になっています」

 髙橋はそう明かしたが、自身のストイックなスケートをショーに落とし込んだ形か。その点、全体で髙橋の息遣いを感じとれるはずだ。

 終盤のソロ『Bios、 Krone』では、久しぶりにアクセルに挑戦している。「まわりすぎました」とあえなく転倒だった。ただ、憂いを抱えて苦しそうに滑りきり、仲間に支えられる姿は演出にも映る。長年、氷の上で過ごしてきた髙橋の人生の投影があるのかもしれない。

「(『Bios、 Krone』は)ひとりで自分を追い込んでしまうところを仲間に助けてもらって、希望に向かうというストーリーで。孤独感じゃないですけど、最後は仲間がいるんだよと。3年間、コロナ禍はひとりでしんどかった方もいるはずで、でも苦しい時に仲間がいたら立ち上がれる。そんな思いを感じてもらえたらと滑っています」

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