【ハイキュー‼×SVリーグ】164cmの「小さな巨人」グリーンウイングス髙相みな実が語る、コートでの「最高」の瞬間
群馬グリーンウイングス 髙相みな実
(連載9:ウルフドッグス小山貴稀から見た『ハイキュー‼』は「教科書」 「雑草」がSVリーガーになるまでを振り返る>>)
(c)古舘春一/集英社この記事に関連する写真を見る
髙相みな実は、なぜバレーボールにのめり込んだのか?
「ふたつ上の兄に負けたくなかったんです」
彼女は言う。子どもの頃、兄は強いチームでプレーしていた。長野県大会、北信越大会で優勝。眩しいライトを浴びていた。
一方、髙相のチームは地区大会で負けた。足の速さも、水泳でも兄には負けたくなかったが、バレーボールに対する自負心はそれ以上だった。
「小1で始めたんですけど、めちゃくちゃ好きで。バレーボール選手になりたくて、小1の文集にも『バレーボールの選手になる』と書いていたらしいです」
バレーの虜になっていたが、順風満帆ではなかった。むしろ悔しい思いをするほうが多かった。身長も、バレー選手としては低かったこともあるだろう。最初はスパイクがうまく打てなかった。
「ネットを越したい」
その一心で挑み続けたという。工夫を凝らすうちに、その日々が"小さな巨人"を生み出すことになった。
髙相の現在の身長は164㎝だが、最高到達点は300cm以上。空中で高く浮いて、体を弓のようにしならせ、右腕にすべてを込めてスパイクを打つ。アウトサイドヒッターとして、勝利のトスを託される選手だ。
小さな体で限界を超えるため、試合ではエネルギーを使い果たして"空っぽ"になる。
「普段の生活ではあまり感情を表に出せないんですけど、コートのなかでは爆発的に出せます!」
髙相は、はにかみながらも楽しそうに言う。普段はおとなしいが、コートに入ると闘志をまとって豹変。それは無意識の変身で、まるで漫画のキャラクターだ。
2022年に、強豪を相手に9点差をひっくり返した試合があった。前日はセットカウント0-3で負け、その日も1、2セットを取られ、3セット目も9点差で追い込まれた。絶体絶命だった。
1 / 3
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。