土居美咲が能登の被災地で考えた「アスリートとしてできること」 現役引退後、小型重機の免許を取得
2月下旬──。
元テニスプレーヤーの土居美咲さんは、1月1日に日本海沿岸を襲った大地震の被災地・能登半島にいた。
17歳でプロ転向した土居さんは、WTAツアー優勝や世界ランク30位などの戦果を上げた15年のプロキャリアに昨年10月、幕を引いたばかり。第二のキャリアを模索中でもあった彼女は、なぜ被災地に足を運び、そこで何を見て、何を思ったのか? 本人に寄稿してもらった。
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小型重機を操縦する土居美咲さん photo by 日本財団HEROsこの記事に関連する写真を見る 現役を引退すると決めた時、私は引退後の生活を思い描けてはいませんでした。
何よりも大事にしていたのは、最後の試合に全力を注ぐこと。最後の試合で最高のパフォーマンスをファンのみなさんに観て頂くこと。セカンドキャリアは引退後に考えればいいや、と思っていました。
しかし、そんななかでも、いろいろなことをやってみたい、経験してみたいという欲はありました。好奇心旺盛な性格なんだと思います。プロテニスプレーヤーとして戦い抜いてきた誇りもある一方で、テニス以外のことを何も知らないという劣等感もありました。
引退して間もなく、他競技の友人経由でHEROs AWARDのパーティに招待していただきました。HEROsとは、アスリートが中心となって社会貢献活動をする取り組みです。自分の知らない世界を見てみたいと思い、思いきって参加しました。
そのなかの活動の一環としてあったのが、小型重機免許の取得。小型重機を扱えることにより、災害があった時に少しでも役立つかもしれないとの思いから、重機講習会への参加を決めました。結果として能登半島地震が起きてから小型重機の免許取得に至りましたが、実は地震発生前から動いていたプランでした。
テニス選手に、年末年始の休みはありません。なぜなら1月に開催される全豪オープンのため、年末から選手は遠征に出発するからです。
昨年引退した私にとっては、約15年ぶりに実家でゆっくり過ごす正月。そんな時に入ってきたのが、能登半島地震のニュースでした。
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