サッカー日本代表のレベルアップに直結する欧州サッカー日本人選手の活躍 福田正博の注目は?

  • text by Tsugane Ichiro

福田正博 フットボール原論

■ヨーロッパ各国リーグでの日本人選手の活躍が、毎週楽しみな状況。サッカー日本代表レベルアップへの好影響も期待されるなか、福田正博氏に今季注目の選手を挙げてもらった。

【鈴木彩艶のセリエA参戦はとてつもなく大きい意義】

 ヨーロッパ各国リーグが幕を開けて日本選手たちの動向が伝えられているが、今シーズン最も注目しているのが鈴木彩艶だ。今季シント・トロイデンからセリエAのパルマにステップアップしたが、この移籍の意義は日本サッカー界にとっては、とてつもなく大きい。

セリエA・パルマで今季開幕からレギュラーとして出場しているGK鈴木彩艶 photo by Getty ImagesセリエA・パルマで今季開幕からレギュラーとして出場しているGK鈴木彩艶 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る これまで何人もの日本人GKが海外挑戦をしてきたが、欧州のトップリーグでゴールマウスを任された選手はいなかった。それがついに現れたのだ。これまで言われてきた身体のサイズ、フィジカル能力などの重い扉を、鈴木彩艶が開いた。

 鈴木は開幕からスタメンに名を連ねて1勝1分で迎えた第3節のナポリ戦で、2枚のイエローカードを受けて退場処分となった。1枚目の遅延行為は置いておくとして、2枚目のイエローを出されたボックス外に飛び出して相手FWと交錯したプレーは、セリエAだからこそ経験できる貴重なものだと思う。

 パルマはDFラインを高く押し上げるスタイルのため、鈴木はDFラインの後ろにある広大なスペースを守らなければならない。そこへ出たボールに対し、ボックス外に出てクリアするのか、それとも待ち構えるのかを瞬時に見極めなければならない。ナポリ戦ではその判断とプレー精度がイエローカードになり、チームにとっては痛手となったが、鈴木のキャリアにとってはプラスだったと思う。

 なぜならGKがこうしたプレー判断を求められる状況は、実はそれほど多くあるわけではないからだ。例えば、どんなリーグでも下位チームの多くは、相手に押し込まれる展開が多く、DFラインを下げて守るケースがほとんど。そのためDFラインの後ろの広大なスペースをGKが埋める状況は生まれない。その点、パルマは今季セリエA昇格組にもかかわらず、アグレッシブなサッカーを志向しているためDFラインが高く、鈴木は貴重な経験を積めているというわけだ。

 これは日本代表でのプレーを考えると大きな財産になると言っていいだろう。冨安健洋や板倉滉がDFラインを統率する時は、ハイラインになることが多い。海外トップクラブでプレーする選手たちにとってはスタンダードな高さなのだろうが、これに対応できる能力や経験値を持つ日本代表GKがこれまでいなかった。

 そうしたなかで鈴木がこの対応力を高めてくれれば、日本代表の守備はさらに飛躍していくことになる。それができるポテンシャルを鈴木は備えているだけに期待している。

 鈴木が欧州トップリーグで経験を積み重ねていくためには、試合に出続けることが何よりも大切になる。代表活動明けのリーグ戦は出場停止だったが、第5節レッチェ戦では再び出番が巡ってきた。こうしたチャンスを逃さず、安定したセービングと判断でゴールを守りきり、ポジションを不動のものにしてもらいたい。

 さらに言えば、鈴木彩艶がGKとしてヨーロッパのトップリーグで認められることで、今季からシント・トロイデンに加入した小久保玲央ブライアンをはじめとする日本人GKへの注目度が高まることを期待している。日本代表のレベルがさらに一段も二段も高まるためには、トップレベルでプレーする日本人GKが増えることが不可欠だ。先陣を切った鈴木彩艶に続き、ほかの日本人GKも存在感を示してくれるよう願っている。

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著者プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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