【名波浩の視点】王者レイソルが開幕ダッシュに失敗したワケ (2ページ目)
それでも結果が出ていないのは、あくまでも対戦相手の意識の問題だろう。J2から上がってきたばかりのチームと、J王者と対戦するのとでは、明らかに気持ちの入り方が違う。今季はどのチームもレイソルをマークして、高いモチベーションでぶつかってくる。そこで結果を出し続けるのは、さすがに簡単なことではない。
当然、レアンドロに対するチェックも昨季よりは厳しくなっている。昨季は、前を向いてボールをグググッと持ち上がっていくシーンが、90分の中で10回は見られたけれども、この日は2回くらいしかなかった。相当イライラしたそぶりを見せ、そんなところからも対戦相手が執拗にマークしていることは察することができる。酒井宏樹のクロスにしても、FWの動きにしてもそう。相手が研究し、昨年以上にケアしている。
そんな中、さらなる奮起が必要だと思うのは、豊富なタレントがそろうFW陣。田中順也にしろ、工藤壮人にしろ、動きの質は悪くないだけに、彼らが何とかゴールをこじ開けてほしい。それは、リカルド・ロボや北嶋秀朗も同様。彼らに求められるのはゴールで、その結果を出さなければ、完全にレアンドロ頼みになってしまう。
いいストライカーというのは、佐藤寿人(サンフレッチェ広島)に代表されるように、毎年コンスタントにふた桁得点できるかどうか。そこで力量が問われるだけに、昨季ゴールを重ねたレイソルのFW陣も、ふた桁得点にはこだわるべきだろう。
「たら」「れば」の話をしたらきりがないけれども、レイソルにとって最大の誤算だったのは、開幕戦の横浜F・マリノス戦で土壇場に追いつかれ、勝利を奪えなかったこと。あの引き分けが、レイソルのリズムを狂わせてしまったように思う。結局、チームが流れに乗れるかどうかは、結果次第なところがある。
ネルシーニョ監督の、試合ごとにガラッとメンバーを代える采配も、うまくいっているときは「すごい」ともてはやされるけれども、結果が出ないと釈然としない采配に映ってしまう。ジュビロ戦でも、前節で2得点を挙げた増嶋竜也を外したことに疑問を感じた人もいただろうし、選手交代の場面でも腑に落ちない起用が垣間見られた。
何はともあれ、現状を打破するには、勝利しかない。チームとしては、間違いなくいい方向に進んでいるだけに、結果さえ出れば、流れは一変すると思う。十分に上位争いできるだろうし、それだけの力がレイソルにはある。
著者プロフィール
名波 浩 (ななみ・ひろし)
1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍
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