サッカー日本代表はほとんど守田ジャパン 変幻自在のスキルは知性から生み出される (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【ゴールはポジショニングのよさの賜物】

 守田はクロスに対し、ゴール前の小川をフォローするようにエリアに入る。攻撃は一旦跳ね返されたが、堂安、鎌田で再び奪い返したあと、下がっていた守田はワンタッチで堂安にリターンし、ボレーシュートを演出している。目まぐるしく動くプレー展開のなか、ポジションを取り直しながら、次のプレーのビジョンを用意していたのだ。

 それは、後半3分のゴールの伏線ともなっている。

 インドネシアのビルドアップに対して、味方がボールの出どころを確実に抑えたところだった。バックパスを受けたGKのキックには恐れ、あるいは迷いが出ていた。ゴール正面に陣取っていた守田は、これを的確にカット。冷静にコントロールし、間髪入れずにGKの手が届かないファーサイドへのシュートを選択している。体勢が不十分だった相手DFがそれをクリアできず、ボールは呆気なくネットを揺らした。

 相手のミスを拾ったラッキーゴールにも映るが、守田のポジショニングのよさ、集中力の高さの賜物だ。

 守田は川崎フロンターレ時代から、技術も戦術もレベルの高い選手だった。しかし欧州で長く鍛錬されたことによって、そのふたつのバランスが同時に上がっている。スポルティングで名将ルベン・アモリムの薫陶を受け、ポルトガル王者の主力になった経歴は伊達ではない。今シーズンはチャンピオンズリーグで(4試合終了時点)2位。欧州の日本人選手で誰よりも高い位置にいるのだ。

 守田は、その知性を用いることによってチーム全体のテンポまで変えられる。相手が怯んだ時、流れを変えるべき時、ポゼッションを守備に使うべき時、それらに応じて、出力を変えながら最大値を出せる。まさに司令塔で、ピッチにいる、いないでは戦い方そのものを変えてしまうほどだ。

 マンチェスター・シティは名将ジョゼップ・グアルディオラ監督のチームだが、ロドリという司令塔がいないと同じ戦いはできない。テンポを作り、変え、修正する、そこでプレーに影響が出る。事実、ロドリがケガで不在の現在は深刻な状況だ。

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