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高校中退、戦力外通告、契約白紙...波瀾万丈の歩み。元阪神の右腕が夢見る最後の舞台

  • 阿佐智●文・写真 text & photo by Asa Satoshi

 今から4年前のこと、メジャーからソフトバンクに復帰した川﨑宗則(現・ルートインBCリーグ/栃木ゴールデンブレーブス)の取材で、福岡の雁ノ巣球場で行なわれていたファーム戦に足を運んだ時のことだった。

 この日は阪神との試合で、相手スタメンには当時ルーキーだった大山悠輔の名もあった。どんな試合内容だったかは忘れてしまったが、まだプロの水に慣れていない大山が高々と上がったファウルフライを落球したことだけは覚えている。

「僕も覚えていますよ」

 福永春吾は、今や阪神打線の主軸となった大山と同じ歳で、同じフィールドに立っていたあの日のことを振り返った。この試合、福永は3イニングを投げ、7安打6失点と二軍戦ながら2敗目を喫した。それでもこの試合の約2週間後、福永は甲子園での広島戦でプロ初登板・初先発のデビューを飾っている。

 福永と大山は2016年秋のドラフト入団組だ。ただ、大学(白鴎大)からドラフト1位でプロという王道を歩んできた大山と違い、福永のプロ入りまでの道のりは紆余曲折を経ている。

今季は徳島インディゴソックスの抑えとして活躍した福永春吾今季は徳島インディゴソックスの抑えとして活躍した福永春吾この記事に関連する写真を見る【高校中退という絶望を味わうも独立リーガーとして再出発】

 大阪の強豪校・金光大阪で1年秋からエースナンバーを与えられるなど、将来を嘱望された選手だった。しかし高校2年時に、二度もヒジを疲労骨折するなど、17歳の少年の心を打ち砕いた。

 この時期のことについて、福永はあまり口を開こうとしないが、高校中退という道を選んだ。福永の将来を案じた両親は、通信制高校への転学を進めた。通信制の高校には野球部がなく、約1年間、福永はボールを握ることすらなかったという。

 転機が訪れたのは、地元関西を拠点とする独立リーグのトライアウトの話が舞い込んできた時だ。しばらくボールを握っていなかったが、ヒジの痛みは消えてきた。おそるおそるの投球ではあったが、行き場のなくなった者たちが集まる独立リーグにおいて、福永の球威は群を抜いていた。

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