あわや野球人生の終焉から奇跡の復活。アルバース先生は今日も投げる (3ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • photo by Kyodo News

 長い苦労の末に2年契約を勝ち取ったアルバースだったが、あらためて野球の難しさ、辛さを痛感させられた。

 昨シーズン、来日初登板(4月4日のロッテ戦)に勝利してから6月末までに9勝をマークしたアルバースは、オールスターにも監督推薦として出場するなど大活躍を見せた。

 2ケタ勝利まであと1勝。誰もがアルバースの10勝は間違いないと思っていた。7月3日から5度登板し、そのうち4試合は6回以上を投げて自責点2以下と好投したが勝ち星を挙げられなかった。

 そして8月7日の西武戦で2敗目を喫すると、球団が2年契約で残留すると発表した直後、腰痛により登録抹消。結局、復帰することなくシーズンが終わってしまった。19試合に登板して9勝2敗、防御率3.08。数字だけ見れば立派だが、「悔しい部分もあった」とアルバースは言う。

「オリックスが私を信頼してくれて2年契約してくれた直後にケガをしてしまって......期待に応えられなかったことが悔しいです。もちろん、残留できたことは感謝していますが、満足してはいけないと思っています。もっと成長しないといけないですし、オリックスからの信頼に応えないといけません」

 オリックスの同僚であるブランドン・ディクソンは2013年に入団したが、その間、9勝で終えたシーズンが3回、8勝が2回と、6年間で一度も2ケタ勝利を達成していない。そのことをアルバースに伝えると、笑いながらこう言った。

「ちょうどこの前、その話を彼としました。彼日本ですばらしいキャリアを積み重ねてきたけど、なぜが2ケタ勝利には届かない。私も来日1年目の前半戦で9勝をマークし、『2ケタ勝利は簡単に到達できる』と思ったら、そこから8試合に登板しましたがダメで、最後はケガをしてしまった。2ケタ勝利が簡単ではないとはっきりわかりました。

 ただ、2ケタ勝利は誇るべき数字ですが、目標にしているわけではありません。誰が勝利を挙げるかよりも、チームが勝つかどうかが大切です。目標は数字的なものではなく、チームを勝利に導く安定感や貢献度だと思っています」

 今季初登板となった4月2日のソフトバンク戦こそ5回7失点(自責点6)と苦しんだが、それ以降は安定した投球を披露している。個人の成績よりもチームの勝利。アルバースは愚直にそれを実践している。

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