北口榛花は「世界記録を投げたいと言った」チェコ人コーチが語る"ハルカ"との出会いとトレーニングの内容 (2ページ目)

  • 寺田辰朗●取材・文 text by Terada Tatsuo

【北口の練習を見始めた頃の印象は?】

 北口の練習ぶりについても、セケラック氏はかなり驚いた。

「ハルカには試合のモードと練習のモードがあった。ほかの選手は練習で60mを投げ、試合で(少し記録が良い)62mを投げるけど、ハルカは(現在でいうなら)試合で67mを投げても練習では60mにも届かない。練習と試合の切り換えが難しい選手だった」

 前年のシーズン終了後、日大の混成ブロックの練習に加わり、下半身のトレーニングにも積極的に取り組んできた。だがセケラック氏のトレーニングは、種類も違ったと思われるが、前述のように北口にとっては"ルール"が高かった。

「跳んで走る練習、リズムのトレーニングを集中的に行ないました。彼女にとってはすごく大変だったかもしれません。その走りとジャンプのトレーニングを、(投げる)テクニックと合わせるようにもっていったんです。チェコでのトレーニングから2カ月後に日本記録(64m36)を投げて、すぐに結果を出してくれました」

 やり投強豪国のコーチの目には北口の何が、世界で戦う上で武器になると映っていたのだろう。セケラック氏は「フレキシビリティ」という言葉を使った。日本語に訳せば「柔軟性」である。

「ハルカの強みはフレキシビリティです。競泳をやっていたからだと思いますが、やりを持っている手が後ろにありながら、上半身を前のほうに持っていくことができます。それはすごくいいことです。体幹も強いし腕も強いですね」

 セケラック氏は「ほかのスポーツ選手と比べてもセンサーがあちこちにある」とも話していた。インタビュー時間の都合で"センサー"の意味を確認することができなかったが、細かい動きを正確に行なうことができる、という意味だろうか。

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