羽生結弦の最大のライバル。ネイサン・チェンの並外れた完成度 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 今季初戦では4回転からの3連続ジャンプで3つ目の3回転フリップが1回転になり、最後に予定していたトリプルアクセルでは力が入ったのか、パンクするミスを出した。それでも技術点では98.67点の高得点をマークしてみせた。

 演技構成点のほうもまだ伸びしろがあることは疑いようもない。今季は2022年北京五輪に向けて、やや挑戦的なプログラムを作って演技の幅の広げようとしていることが見てとれる。終盤の見せ場のコレオシークエンスでは、これまでにないヒップホップ調の動きで躍動する。様になるようにするには、陸上でも習得に時間を要するヒップホップの軽やかなステップを、スケート靴でやりこなす、その身体能力はすばらしいのひと言に尽きる。

 試合後の会見で、ユニークなコレオシークエンスをどう作ってきたのかを問われた世界王者はこう答えた。

「振付師のマリー=フランスと一緒に作りあげたもので、そもそも彼女がどこからこのコンセプトを持ってきたのか、わからなかったです。とにかく、彼女が私に合う、ぴったりだと思って選んでくれたと思うので、最後のスケーティングのところは面白いやり方だなと思いましたが、最初は『どうなんだろう』と思いました。チームの中に『シルク・ド・ソレイユ』をやっているヒップホップのダンサーがいるんですが、その方の力も借りて、まずは陸上でいろいろやってみた。その後、氷上でやってみたらやれたので、よかったと思っています」

 シーズンごとに違ったテイストのプログラムを作って、表現者としても群を抜く20歳の真骨頂だろう。今季これから滑り込んでいく完成形が楽しみでならない。

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