宇野昌磨はコーチ不在でも孤独じゃない。リンクの熱気を力に変える (3ページ目)
「楽しむ」
今シーズン掲げた信条は、直感的な彼を縛らないだろう。
もっとも、楽しむことはジャンプを跳ぶことであり、スコアを出すことでもある。結局、競技者はそこに行き着く。結果から逃れられないことを、彼自身がいちばん弁えているはずだ。
だからこそ、スケーターは共感を必要とする。
「(スイス合宿でコーチを受けた)ステファン(・ランビエル)がいると、自然に笑顔になれたというか。技術指導よりも、話し相手がいるのはいいなって。自分一人だと共感する人がいない。感情のところで、楽しくないなと。(ランビエルに)教えてもらったからこそ、『跳びたい!』とかなるので。メンタルのところは(コーチがいることで)いいところがありますね」
宇野はそう言って、頬を少し緩めた。コーチ不在の功罪は、1年後に明らかになる。どちらに転んでも、彼が選択した挑戦だ。
しかしリンクで、宇野が孤独を感じることはない。熱の入った声援は止まないだろう。この日の会場にも、心のこもった横断幕が数多く飾られていた。彼はその熱気を力に変えられる。
「演技を終えた時に楽しかったか。それが今シーズン、最大の目標です」
大会後、宇野は静かに言った。プログラムが未完成であるがゆえに、「予感」も抱かせた。今月開幕のグランプリシリーズ、11月のフランス大会が初戦となる。
3 / 3