引退の錦織圭は「めちゃくちゃ頭がいい」 杉山愛が指導者としての資質に太鼓判「彼のアドバイスは、どんな人にも刺さる」 (3ページ目)
【本当に大事なことが見えにくい時代】
その問いに杉山さんは、「彼しかしていないこの経験を、多くの人に伝えてほしい」と明言した。
「日本人で、グランドスラムのシングルス決勝の舞台に立ったのは、(大坂)なおみと圭だけ。その経験を、後進や関係者たちに語り伝えてもらえたらうれしいなと思います。
今はSNSに多くの情報があふれていますが、それだけに、本当に大事なことが見えにくくなっている側面もあると思うんです。テニスでは、技術を磨くことはもちろん大切です。ですがそのためには、毎日の取り組みや、苦しい時の考え方などが重要になってくるんです。
単にコート上だけではなく、コート外での要素が、実は大きいんですよね。それはトレーニングだったり、ウォームアップだったり、試合前の準備の仕方だったり。先ほど言ったように、ただでさえ大変なワールドツアーを転戦していくうえでのコツもあると思います。そういう本当にベーシックな部分の積み重ねが、最終的には大きな差を生むと思います。
フォアハンドの打ち方がどうとか、サーブのフォームをどう変えるとか、選手として技術を追求していくことは、もちろん重要です。でも正直、それってわかりやすい部分なんですよね。それだけだと、自分の足りないところは補えない。
課題をクリアするまでがんばる力......それこそ、レジリエンス(ストレスへの耐久力・精神的回復力)などの本質的な部分が必要になってくる。圭だったらそのことを、彼の言葉や方法で伝えられる。彼のアドバイスは、どんな人にも刺さると思いますから」
日本テニスの革命家である錦織も、松岡修造氏やマイケル・チャン氏ら、かつての開拓者たちの意志を継ぎ、一時代を築いた。その彼もやがては、後進たちに叡智(えいち)を授け、時代を動かす歯車となり、そうして新たな歴史は紡がれていく。
(つづく)
◆伊達公子の視点(1)>>
【profile】
杉山愛(すぎやま・あい)
1975年7月5日生まれ、神奈川県横浜市出身。4歳でテニスを始め、15歳で日本人初の世界ジュニアランキング1位となる。1992年にプロ転向。WTAツアーでシングルス6勝、ダブルス38勝を挙げ、世界ランキングはシングルス8位、ダブルス1位を記録。四大大会では女子ダブルスで3度、混合ダブルスで1度優勝。四大大会シングルスに62大会連続出場し、男女を通じた世界最高記録(当時)を樹立する。オリンピックには4大会連続(1996年、2000年、2004年、2008年)で出場した。2009年に現役を引退し、2023年度から国別対抗戦「ビリー・ジーン・キング・カップ」日本代表監督に就任。身長163cm。
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。
【写真】日本女子テニス「6人のティーンエイジャー」フォトギャラリー
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