日本女子テニス「6人のティーンエイジャー」が次々と世界へ 海外メディアも注目するニューウェーブ (3ページ目)
【黄金世代と呼ばれるプレッシャー】
かくも成長の足跡は異なるが、彼女ら全員に共通しているのは、高い目的意識と実行力かもしれない。
彼女たちが15歳前後だった2021年から2022年上旬あたりは、まだコロナ禍の渡航規制もあり、海外遠征するにしても協会等の組織的サポートを受けるのは難しい時分。ただ、その時期でも前述の選手たちは海を渡り、多くの国際大会で場数を踏んだ。
大会会場では自ら練習相手を探し、コートを確保し、現地スタッフや選手仲間と英語でコミュニケーションを取る。それが可能な環境や陣営あってのことだが、独立独歩の過程で獲得したたくましさは、テニスの世界では必要不可欠な資質だ。
木下晴結●2006年10月27日生まれ photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 若手たちの活躍が目立つと、周囲は「黄金世代」と呼び、どうしても過剰な期待を寄せてしまいがち。
「それらの声が重圧にはならないか」と、自戒も込めて齋藤に聞いたことがある。すると彼女は、こちらの目をまっすぐに見て、口の端に笑みを浮かべて、こう答えた。
「緊張することもありますが、それは自分で自分に期待するから。(小池)愛菜ちゃんや(石井)さやかちゃんのように仲のいいライバルがいるから、お互い高め合えるかなと思う。ひとりで行くより、みんなで競い合いながら行けたほうが、自分はうれしいんです。
プレッシャーみたいなのは......ないですね。逆にどんどん盛り上げていきたい、みんなで! みんなのことは12歳の頃から知っていて、そんなふうに小さい頃から競ってきた人たちがトップ100とかに入れたら、けっこうすごいことだと思うんです。周りの人が応援してくれたらテニス界も盛り上がると思うので、理想は高いけど、メリットだらけかなって」
クロスリー真優●2006年6月15日生まれ photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る 周囲の期待をも力に変え、笑顔で急こう配の坂道を駆け上がるようなたくましさと勢いが、今の10代選手たちにはある。
世界も注目するニューウェーブは、その勢力を増しながら、大海を渡っていく。
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。
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