2020.09.03

大坂なおみに特殊トレーニング効果。
体勢整え能力がグンと向上した

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

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 彼女を取り巻く膨大な情報や賛否の声も、ひとたびコートに足を踏み入れば消え去り、あとには自身と対戦相手のみが残るという。

強打者ジョルジとの打ち合いを制した大坂なおみ 全米オープン2回戦の対戦相手のカミラ・ジョルジ(イタリア)は、コートのどこからでもウイナーを狙い、同時にミスの多いことでも知られるツアー屈指の強打者。そのような選手と戦う時は、相手のミスを誘うという戦術選択もありえるだろう。

 だが、大坂なおみは、「私は誰が相手でも、自分が打ち合いを支配することを目指している」と明言する。

 一発で決めにくる相手のリターンを封じるため、まずはファーストサーブの確率を上げ、セカンドサーブではバリエーションを増やすこと。強打に対してはしっかり打ち返し、その威力を相殺すること。それら自分のやるべきことのみに集中し、彼女は無観客のスタジアムに立った。

 無観客であることは、今の大坂にはプラスに寄与しているかもしれない。大坂にとってのアーサー・アッシュ・スタジアムは、2万人の観客の歓声に満たされた熱狂の劇場だ。

 その熱量の消失には、当然のように覚える寂しさはある。ただ、「観客がいないのは、悪いことばかりでもないみたい」と、幾分決まりの悪そうな笑みをこぼした。

「観客がいると、みんなを楽しませなくちゃと思って、特別なことをしようと思うことがあるの。そういう時はたいがい、誤ったプレー選択をしてしまうから......」

 そのようなある種の雑念からの開放が、安定のプレーをもたらしているという。

 もうひとつ、今大会の彼女のプレーに強靭な軸を通している要素がある。それが、フィジカルの向上だ。

 コロナ禍によるツアー中断期間中、大坂はシャラポワの元トレーナーでもある中村豊をチームに招き、トレーニングにも力を入れてきた。自らもプロを目指し、テニスに捧げる10代を過ごした中村は、強化したフィジカルをコート上の動きと連想させる手腕に長ける指導者だ。