「被災地にグラウンドを!」アントラーズ小笠原満男の熱き思い

  • 佐野美樹●文・撮影 text&photo by Sano Miki

 2016年1月9日に開催された『大船渡市サッカー協会創立50周年記念式典』の壇上で、小笠原満男(鹿島アントラーズ)が自らの熱い気持ちを吐露した。会場に集まった多くの関係者に向かって、少しばかり高揚した声で、力強くこう訴えた。

「季節を問わない人工芝のグラウンドを作って、この街をもっと活性化させましょう」

 大船渡に人工芝のグラウンドを作りたい――それは、小笠原がかねてから思い続けてきた"願い"だ。

被災地では整備されたグラウンドが少なく、雪深い土地が多いため、地元の子どもたちとのふれあい活動はおおよそ体育館で行なわれることが多い被災地では整備されたグラウンドが少なく、雪深い土地が多いため、地元の子どもたちとのふれあい活動はおおよそ体育館で行なわれることが多い 東日本大震災の直後は、生活に欠かせない物資をできる限り集め、小笠原は自ら車を運転して被災地と住まいのある鹿嶋市との間を何度も往復した。まもなくして、東北のサッカー界を支援するために、東北出身のJリーガーを募って『東北人魂』という有志団体を結成。オフの間を利用して、被災地の子どもたちの笑顔を取り戻そうと、サッカーを通したふれあい活動を実践してきた。それは今も、積極的に行なっている。

 しかし、被災地で最初に直面したのは、子どもたちとボールを蹴る場所さえままならない、という現実だった。小笠原たちが、「サッカーをやめるなよ。諦めるなよ」と子どもたちに声をかけると、彼らから返ってくるのは、決まってこんな悲しいフレーズだった。

「サッカーをやりたくても、サッカーができる場所がないんです」

 その言葉を受けて、小笠原は子どもたちが元気で走り回れる場所をどうにかして作りたいと思うようになった。その思いは次第に強くなり、被災地にグラウンドを作るプロジェクト『東北人魂 岩手グラウンドプロジェクト』を発足させた。当時はとにかく、サッカーができるような整備されたグラウンドさえ作れればよかった。

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