「多摩川クラシコ」は成功 だが地元民だけが楽しむお祭りと化したJリーグに未来はあるか (2ページ目)
【企業努力、地元密着は結構だが...】
このアンバランスな関係を、筆者は見すごすことはできない。
市場価値は低くても、ファンがスタンドに足繁く通う理由はなにか。見逃せないのはクラブの企業努力だ。チームという商品をクラブは最大限よく見せる努力をしている。ひと言でいえばそういう話だ。
FC東京は名前に首都の名を冠するが、Jリーグを制した過去はない。万年中位。たまに優勝候補に挙がるも、期待外れに終わるパターンをずっと繰り返している。名前と成績との間に大きなギャップを抱えているクラブであるにもかかわらず、この日の3万7452人という数字が示すように、観客はそれなりに入る。現場サイドはともかく営業サイドは頑張っている。
相手の川崎も、つい2、3年前までJリーグで盟主と言われてきたチームだ。ところが昨季は8位に後退。今季も26節を前に12位と、病状をいっそう悪化させている。観客数は半減してもいいくらいだが、クラブは減少の幅をごくわずかに止めている。地元密着を掲げるJリーグの精神が浸透した結果だと言ってもいい。地元民にとってJリーグ観戦は欠かせないイベントになっている。それはそれで喜ばしい話である。
だが一方で、波及効果はない。話題は広がらない。2017年から4シーズンで3度優勝を飾った川崎が失速しても、全国的には大きな話題にならない。その川崎と競り合い、2019年、2022年シーズンに見事なサッカーで優勝した横浜F・マリノスも、今季は9位に沈んでいるが、大きな騒ぎになっていない。
極めつきは浦和レッズだ。年間予算で今季、史上初めて100億円を突破したJリーグ1の金満クラブであるが、成績は例によって鳴かず飛ばず。成績も第26節終了時点で11位と低迷する。費用対効果がJリーグで最も悪いチームという評判を払拭できずにいる。だがこの"カッコ悪い話"も全国には広がらない。
何事も内にこもる傾向があるのだ。ほぼ満員に膨れあがった日曜日の味スタの風景に、それは集約された。
2 / 4