今永昇太が明かす「栗山監督から託された侍ジャパンでの役割」と「ダルビッシュに聞いてみたいこと」
まもなく第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が開幕する。第2回大会以来の優勝を目指す日本代表は、ダルビッシュ有、大谷翔平を筆頭に錚々たるメンバーが揃った。そのなかでキーマンのひとりに挙げられているのが今永昇太だ。貴重な左腕であり、投手陣ではダルビッシュに次ぐ年長者でもある今永には、グラウンドだけでなくそれ以外の部分での役割も期待されている。そんな今永に今の心境を語ってもらった。
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【国を背負って戦うのは怖い】
── 日本代表として今、いよいよWBCへ向かう心境はいかがですか。
「あんなに選ばれたいと思ってきた日本代表にいざ選ばれると、恐怖心が出てくるものなんですね。国を背負って戦うということは、いい結果が出れば英雄のように扱ってもらえるかもしれませんが、国民の方々の期待に応えられなかったら凄まじいバッシングをされる可能性もあるわけで、それは怖いですよ。でも、そういう経験も日の丸を背負うからこそだと考えれば、やってみたいという気持ちもありますし、複雑ですね」
── でも、これまでの国際試合(アジアチャンピオンシップやプレミア12)での今永投手は三振を奪いまくっている印象があります。
「自分ではあまりその実感はありません。むしろ三振をとりたいという欲を出さないことは大事だと思います。空振りはもちろんとりたいし、アウトもとりたいんですが、そう思って力ずくになればなるほど、相手バッターが想像するボールを投げてしまうと思うんです。欲が出ると、ちょっとだけフォームのメカニズムが狂って、腕のしなりが失われたり、リリースポイントの感覚が失われて回転数の多い球が投げられなくなる......そういう経験があるので、あくまでフラットに、ボクシングで喩えるとノーモーションからジャブを打つような感覚で投げるのは一番いいと思っています」
── 国際試合ではいろんな予期せぬことが起こります。だからこそ普段からルーティンをつくらないようにするという考え方と、そういう時こそ普段のルーティンを大事にするという考え方があると思いますが、今永投手はどちらですか。
「僕は普段からのルーティンがあるほうなので、どんな環境でも最低限のパフォーマンスを出すためにルーティンを崩さないよう意識しています。同時に、そのルーティンができなかったとしても気にしない鈍感力を持っていることも大事です。やろうと思っていたストレッチができなかったとか、道具がないとか、アップ時間がとれないとか、そういうなかでも自分で積み上げてきたルーティンをいかに淡々とこなしていくか。それとともに、何かができなかったとしても気にしない。そういう精神状態でいられれば、どれだけプレッシャーのかかる場面であったとしても一発目から自分のパフォーマンスを出しやすくなると思うんです」
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著者プロフィール
石田雄太 (いしだゆうた)
1964年生まれ、愛知県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局し、「サンデースポーツ」などのディレクターを努める。1992年にNHKを退職し独立。『Number』『web Sportiva』を中心とした執筆活動とともに、スポーツ番組の構成・演出も行なっている。『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』(集英社)『イチローイズム』(集英社)『大谷翔平 野球翔年Ⅰ日本編 2013-2018』(文藝春秋)など著者多数。