阪神・佐藤輝明の大スランプの理由はどこにあるのか。名コーチが指摘する問題点と解決策

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Koike Yoshihiro

 35打席ノーヒットの末、二軍降格となった佐藤輝明(阪神)。豪快なスイングで開幕からホームランを量産していたが、東京五輪開催による中断期間を境に当たりが止まり、三振ばかりが目立つようになってしまった。はたして、その原因はどこにあるのか。ヤクルトや近鉄などで長く打撃コーチを務め、多くの一流打者を育てた伊勢孝夫氏に不振の要因、打開策を聞いた。

球団新人最多記録となる23本塁打をマークしてる阪神・佐藤輝明球団新人最多記録となる23本塁打をマークしてる阪神・佐藤輝明この記事に関連する写真を見る どれだけすばらしいバッターでも「プロの壁」というのは必ず訪れる。それは活躍し始めたシーズン開幕当初からわかっていたことだ。それなのになぜ、予防となる対策をしてこなかったのか。本人はもちろんだが、首脳陣にも疑問を感じる。

 ホームランはおろか、ヒットすら打てなくなった頃から、新聞やテレビなどでいろいろな指摘が目につくようになった。グリップの位置がどうこうといった技術的なことや、シーズンの疲れでフォームが崩れているといった体力的なこと、さらに打たなきゃという焦りがバッティングを狂わせているといった精神的なことまで、さまざまな意見が飛び交った。

 すべて当たっているようにも思えるが、少なくとも技術的な部分に関しては、それほど大きな問題はないと思っている。それ以前に、バッティングそのものを狂わされている、つまりバッティングになっていないというのが、私の見立てである。

 二軍で調整するというのは反対だ。シーズン前半で20数本のホームランを打った打者なのだから、二軍の投手相手に結果を出すのは当然である。要するに、二軍でのプレーは気晴らし程度なもので、そこで好結果を出したからといって一軍に上がっても、また同じ結果になるのではないかと思っている。個人的には、一軍での代打起用も賛成しない。そもそも佐藤は代打で結果を出していくタイプではないからだ。

 では、どうすればいいのか。私なら、一軍に残し、7番、8番でもいいからスタメンで使い続け、そのなかで調子を取り戻させる。容易なことではないが、佐藤はそういうタイプだと思う。

 とはいえ、ただ打席に立てばいいというわけではない。しっかりと目的を持つことが大事になる。具体的にいえば、配球への対応とボールの見極めだ。

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