2015.02.01

怪物復活を予感させる、松坂大輔とホークスの「約束」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 彼は今まで、誰かを”見返す”ための野球をやったことがなかった。

 子どものころから天真爛漫に育てられ、そういう性格だったということもあるだろうし、ずっと追い風に背中を押されてきたということもあっただろう。

9年ぶりに日本球界復帰を果たした松坂大輔(左)と王貞治球団会長

 しかし、プロ野球選手の中には、何かを見返すために野球をやらざるを得なかった人もいる。ドラフトで指名されなかったから、トレードに出されたから、あるいはクビになったから、いつかあのチームや監督を見返してやる。メディアに叩かれたからアイツらを見返して黙らせてやる……そんな怒りや悔しさに包まれた日々が、いつしか野球を”見返す”ための道具にしてしまう。もちろん本意ではなかったろう。

 何年も前、松坂大輔とそんな話をしたことがあった。

 そのとき彼は、そういう野球に縁のない人生に感謝していた。実際、松坂はいつも楽しそうに野球をしていたし、だから観るものは彼の野球にワクワクした。

 しかし、最近はどうだったろう。

 あの松坂が野球を苦しそうにやっていると感じたことが何度か、あった。

 とりわけ、去年は苦しかったに違いない。

 それは、思うような結果を残せなかったからではない。むしろその逆で、彼が苦しかったのは、これほどまでに結果を問われないとは思いもしなかったからだ。

 去年の開幕前、マイナー契約の招待選手としてスプリング・トレーニングに参加した松坂は、5番目のローテーションの座を目指してオープン戦で結果を残し続けた。しかし若いピッチャーを使いたいメッツはあれこれと理由にならない理由を並べて松坂に追試を課し、決断を遅らせ、挙げ句の果てにまさかの開幕マイナーを通告した。結果を問われたわけではない結論に、松坂が忸怩(じくじ)たる思いを抱いたことは想像に難くない。

 だが、マイナーで開幕を迎えた松坂はたったの2度投げただけで、4月半ばにはメジャー昇格を勝ち取った。そしてその後の1カ月で14度もの中継ぎ登板をこなし、ついに先発のチャンスをつかむ。そこで6回を3安打2失点に抑えて、松坂は勝ち投手となった。

 それでも次の先発のチャンスは巡ってこない。またも2度の中継ぎを挟んで、今度は中9日で2度目の先発のチャンスを与えられる。その後は故障者の続出に加え、若手が思うように伸びなかったこともあって、ローテーションの一角を担うようになった。