ムーキー・ベッツ戦線離脱から約1カ月 1番・大谷翔平のドジャース打線の現状は? (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【ベッツ復帰後に光明照らすロハスの堅守】

 守備では、ベッツ不在の間、ベテランのミゲル・ロハスが正遊撃手を務めている。これもいい選択肢になっている。

 ベッツは身体能力の高い選手で、右翼手で6度のゴールドグラブに輝き、二塁も守れる。そして今年は初めて遊撃手にチャレンジしたが、このポジションは難易度が高い。今季531.1イニングをプレーし、9失策。責任感の強いベッツは、毎日自主練習に取り組み、新しいポジションを学んでいたが、今回の長期離脱で遊撃手としての成長は止まってしまう。一方のロハスは遊撃手が本職で、今季も242.2イニングを守り無失策。守備範囲は広いし、グラブさばきも軽快、肩も強く正確で、併殺の動きも熟達している。

 ドジャースのディノ・イベル三塁ベースコーチは「私に言わせれば、ミゲルは球界でトップ5の守備力を持つ遊撃手」と称賛しており、ベッツとの差は明らかだ。ドジャース首脳陣も10月のポストシーズンに向け、守備で信頼できる遊撃手がどれほど重要かを再認識している。

 そのロハスの課題は打力だったが、今季は打率.283、出塁率.327、長打率.428と、レギュラーとして十分な数字を残している。開幕からロハスが安打を打った試合ではドジャースは24連勝、これは新たなメジャー記録にもなった。チームリーダーでムードメーカーでもある彼がこのまま打ち続けられるなら、ロハスが正遊撃手でいいし、ベッツは二塁を守ればいい。現在のギャビン・ラックス二塁手は、守備はうまいが、打撃は打率.211と一向に調子が上がってこない。

 デーブ・ロバーツ監督は、ロハスにレギュラーを任せることについて「守備力については議論する必要はない。ムーキーの復帰のタイミングや、ミゲルの体調など、状況次第だ。我々はこの選択肢について必ず検討する」と説明している。

 懸念は、ロハスが35歳の年齢で毎日プレーしながら、体調を維持し、よいパフォーマンスを続けられるかどうかだ。過去に足のケガに悩まされたことがあり、今は両足に血流制限(BFR /blood flow restriction)のサポーターを巻いている。血流を一時的に制限することで、筋肉が硬くなるのを防ぎ、ケガのリスクを減らせる。試合前後に約30分間治療を受け、さらに疲労をためないよう試合前の練習時間を減らした。食事や水分補給にも気を配り早く寝るようにしている。ロバーツ監督は「トレーナーの意見を聞きながら、適度に休みを与えていきたい。我々にとって非常に貴重な選手。健康な状態に保ちたい」と言う。

 懸念点があるにせよ、ロハスの現状は、ベッツ復帰後の打線・守備のバリエーションに幅を持たせていることは間違いない。

プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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