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イチローは現役時代と変わらぬ姿。
キャンプ地の「遊び」で見た打の原型 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Taguchi Yukihito

 ふと思った。

 目の前のこのバッティングこそが、イチローの原型なのではないか、と。

 ここ何年か、この時期のイチローのバッティング練習は試行錯誤が続いていた。速い球に差し込まれないように下半身を沈めてみたり、始動を早くしてみたり、左方向への打球を打ってみたり......そうした結果を残すためのアプローチから解放され、今のイチローはピュアにバットを振って、ボールを打っている。きっとこれが素のイチローなのだろう。そんなことをイチローに投げかけてみたら、彼は照れ臭そうにこう言った。

「遊びですよ、遊び......」

 いやいや、むしろ、本来、アスリートの「遊び」とはこういうピュアなパフォーマンスを指すのだろう。ふざけて、笑って、力を出し切らないパフォーマンスを「遊び」と表現するのではない。真剣に、腹の底から唸り声を絞り出して、力を尽くしたこのパフォーマンスこそが、イチロー流の「遊び」なのである。イチローは現役を退いても依然としてイチローのままだった。打ち終わったイチローはこう言って引き上げていった。

「さあ、帰ってトレーニングでもするか」

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