【ハイキュー‼×SVリーグ】Astemoリヴァーレ茨城の雑賀恵斗は「王様」影山飛雄を見て思う「セッターはスパイカーの気持ちを汲み取ってこそ」
Astemoリヴァーレ茨城 雑賀恵斗
(連載14:Astemoリヴァーレ茨城の長内美和子が語る中心選手としての覚悟 落ち込んだときの支えは田中龍之介の言葉>>)
(c)古舘春一/集英社
「セッターは、アタッカーが打ちやすいトスをあげるのが大事。トスを振って、ブロックを分散させる。そういうトス回しが理想ですね。ミドルを生かせてこそサイド(からの攻撃が有効)、とイメージしながらやっています」
雑賀恵斗はそう語った後、少し恥ずかしそうな表情を浮かべた。能弁な自分に照れているのか、素直な印象の持ち主だ。
気づいた時には、バレーが身近にあったという。母親がママさんバレーをやっていた影響が強く、外から眺めて楽しそうに映った。
「私は最初からセッターではなく、スパイカーもやっていました。スパイクは楽しくて、日本代表でも活躍したスパイカーの長岡(望悠)さんが同じ左利きで、『格好いいな』と思っていたので。ボールをつないで、みんなで点を取るのが楽しかった。得点のたび、みんなでワーッて喜ぶのも」
雑賀は"共同作業"に幸せを感じた。思いがひとつになる。その瞬間がたまらなかった。
中学ではセッター、スパイカーをかわるがわるやっていたが、高校1年でセッターに指名された。最初は「一番難しいポジション」と聞かされていて、ためらったという。しかし、自分のトスで試合が決まる瞬間はなんとも言えない喜びがあり、居場所をつかんだ気がした。
「セッターは面白いけど難しいです。この世界(SVリーグ)に入って、より強く感じますね。高校の時は考えたこともなかったデータを使いますし。『相手がこう来るから、こう攻めよう』と」
彼女は感覚を研ぎ澄まし、考察する。セッターのハンドリングは、それぞれの選手によって個性がある。それはほとんど生来的に備わっているもので、彼女は彼女のハンドリングを磨く。
「ハンドリングは人によります。他の選手を見て『上手だな』と思っても、それを取り入れるのは難しい。私のハンドリングについてですか? 自分ではなんとも言えないですけど、『柔らかくしよう』とは思っています。でも......強いかも(笑)。いい時のトスは、初速は速いけどピュッと止まる感じで、スパイカーが気持ちよく打てるんです」
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。