錦織圭が「自信」をつかむきっかけとなった一戦とは

  • 神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi photo by Ko Hitoshi

密着ライターが感じた「2014年、錦織圭が変わった瞬間」(3)

「全豪のナダルとやった試合で、今までにない充実感と、テニス自体が変わっていると実感したし、ナダルを追い詰められたと実感した。信じることができるきっかけになった」

 自己最高のATPランキング5位で2014年シーズンを終えた錦織圭が、飛躍へのターニングポイントだと振り返ったのは、グランドスラム初戦・オーストラリアンオープンでのラファエル・ナダルとの4回戦だった。

 17位でシーズンをスタートさせた錦織は、13年年末から招いたマイケル・チャンコーチと取り組んだ厳しい練習の成果をいかんなく発揮して、順当に4回戦へ進出。当時の世界ナンバーワンのナダルと対峙した。ナダルとは6度目の対戦で、初対戦時に1セットを奪ったものの、以降は1セットも奪えず、錦織は5連敗中だった。

 11年から全大会に帯同しているダンテ・ボッティーニコーチは、冗談で「ラファに勝つには、圭が全ショットをオンザラインに決めないといけないね(笑)」と、アルゼンチン人らしいラテンのノリで語ったこともあった。

 結果は、6-7、5-7、6-7で錦織のストレート負けだった。だが、スコアだけで読み取れない錦織の確かな成長と、チャンコーチとの化学反応があった。

 第1セット65分、第2セット62分、第3セット70分、実に濃密な3セットの中で、「自分が左右に結構振る場面もあったので、無理をしなくても戦えた場面が、今までの対戦より多くあった」と錦織が語ったように、ナダルを上回るプレーが何度も見られたのだ。

 武器である俊足を駆使した錦織は、なるべくベースラインから下がらずに、早いタイミングでボールを捕らえて攻撃した。錦織のフォアハンドストロークは、目に見えて以前よりスピードを増し、伸びのあるボールがナダルのコートを深くえぐった。

「ん~、正直よくわからないですね。近いような、まだまだ遠いような気もしますし......」

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