【プロ野球】大谷翔平はなぜ「二刀流」に心を揺さぶられたのか?

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

 そして決め手となったのは、日本ハムフロント陣や栗山監督による「二刀流」への誘いだった。ダルビッシュ有が背負った「11」を提示して投手としての大きな期待を伝える一方、同時に主軸として育てる用意もあることを伝え、大谷のメジャー挑戦に代わる「パイオニア精神」を刺激したのである。

 かくして、大谷は日本ハムへの入団を決意した。

「アメリカで長くプレイするためには最初から行った方がいいという考えがだんだん変わってきた。二刀流も僕自身は考えてはいなかったけど、栗山監督に『誰も歩いたことのない道を歩いて欲しい』と言われたことが決断の決め手となりました」

 日本ハムは10月25日のドラフト会議前日に大谷の強行指名を表明した。これも、もし交渉が成就した際に、大谷と球団の“密約”を疑われないようにするためだった。縁が結ばれた今となっては、すべては日本ハムのシナリオ通りに進んだという見方もできよう。

 しかし、入団発表の翌日には日本球界の冷たい反応も噴出し始める。先陣を切ったのは楽天の星野仙一監督だった。

「日本球界に行くんなら、ウチも指名しとった。彼の将来は本人が決めることだけど、ちょっと大きな問題になる。これをやったんであれば、ドラフトの意味がない」

 大谷のメジャー表明によって、ドラフト1位指名を見送った球団が、大谷の翻意に疑義を唱えるのは当然予想されたことだ。大谷側と日本ハムとの密約を疑うわけではないものの、同じパ・リーグ球団の指揮官としては苦言を呈さずにはいられない。そんな星野監督の心情もわからないでもないが、熟慮、英断、困惑を繰り返し、最後は苦渋の決断を強いられた18歳の高校生にかけてあげるべき言葉は、日本球界への歓迎の意と、同じ野球人としての激励ではなかったか。

 いずれにせよ、大谷翔平のパイオニアとしての挑戦が、これから始まる。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る