検索

【MLB】ドジャース・山本由伸はABS(判定チャレンジ制度)時代にスプリットをどう進化させたのか (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Hideki Okuda

【有効に作用したスプリットの使い方】

 ABSによって低めの判定が変わったシーズンに、ただ従来通りの投球を続けていたわけではない。ストライクゾーンへ思いきって投げながら、そこで得た感覚を次の登板へつなげていく。45打者連続アウトは、その試行錯誤が機能していた時期を象徴する数字でもあった。

 そして夏場になると、もうひとつの変化が目につくようになった。直球だ。

 シーズン序盤には、直球を打者に強く捉えられる場面が時折あった。しかし8月になると、その球が明らかに有効になっているように見えた。8月21日のピッツバーグ・パイレーツ戦では直球だけで6度の空振りを奪い、見逃しのストライクも取っていた。そこで、球質そのものがよくなったのか、コースなのか、それともほかの球種との組み合わせなのかを本人に尋ねた。

「感覚よく投げられているとは思いますし、やっぱりスプリットに(打者の)マークがいくことだったり、高めを狙っているバッターが多い時とか、そういう時はすごくストレートがより有効になっているのかなとは思います」

 ここに今季の山本の投球を読み解くヒントがある。スプリットと直球は、それぞれ独立した武器ではない。低めに落ちるスプリットを意識させ、その意識を利用して直球を投げる。あるいは高めを待っている打者に対して、その狙いを読みながら球種とコースを選択する。山本の「コントロール」とは、単に捕手が構えた場所へ正確に投げる能力だけではない。その象徴となったのがスプリットの使い方だった。

 ABSで低めの判定が厳密になったからといって、山本はスプリットを減らしたわけではない。むしろメジャー3年目にして初めて、直球を上回る最多球種となった。レギュラーシーズンを終えて、スプリットは728球(26.6%)、フォーシームは715球(26.2%)。わずかな差とはいえ、最後まで順位が逆転することはなかった。

 ただし、増えたのは「決め球」としてのスプリットではなかった。2ストライク後や投手有利のカウントでの使用割合はむしろ減少。反対に増えたのが初球や早いカウント、さらにはボール先行になった場面だった。MLB公式サイトのデビッド・アドラー記者が8月8日付の記事で紹介したデータサイト『スタットキャスト』の分析では、初球でスプリットを投じる割合はメジャー1年目の10%から今季19%へ上昇。またボール先行時にはスプリットの48%をストライクゾーン内へ入れる一方、2ストライク後のゾーン内投球率は30%未満だった。つまり同じスプリットを、ストライクを取る球、カウントを整える球、最後にボールゾーンへ誘う球として、使い分けていたのである。

 山本自身も今季のスプリットについて「状況や対戦相手によります。今はいろいろな選択肢がありますから」と話している。

2 / 3

登録は簡単! チェックを入れてボタンを押すだけ 詳しくはこちら

キーワード

このページのトップに戻る