2019.07.14

体重100キロ超も投球は繊細。
酒田南のエースはすべてがど迫力だ

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Nikkan sports

「山形にいいピッチャーがいる」という情報を聞き、見てみたいと思ったが、その投手の体重が100キロを超えていると知り、正直どうしようか迷った。しかし、そのチームにはほかにも興味をひかれる選手が何人かいたこともあって、春の県大会を観戦することにした。

 山形県酒田市にある光が丘球場には初めて訪れた。海がすぐ近くあり、松林に囲まれたのどかな球場だ。

「これだけ囲まれていても、海から風が吹く日は砂が舞って……大変なんですよ」

 地元の監督から泣きが入るほど、酒田の”風”は山形では有名なのだそうだ。

140キロを超すストレートが武器の酒田南の大型右腕・渡辺拓海 グラウンドでは第1試合が行なわれていた。ネット裏の隅のほうで、お目当てである酒田南の選手たちが試合を見ていた。そのなかに、背番号1の渡辺拓海の大きな背中もあった。

 第1試合は予定よりも長引いており、次に試合を控える選手たちはどんな心境なのだろうと思い、彼らの表情を見てみた。このあとに行なわれる試合に勝てば、次の相手になるチームだけに関心はあるだろうが、さすがに選手たちも「待ちくたびれた感」が漂っていた。

 そんななか、視線をグラウンドに据えたまま、じっと観察を続けている渡辺の姿があった。さらに近づいて見てみると、時折ブツブツとつぶやきながら、本気の視線は最後まで変わらなかった。

 いよいよ2試合目が始まったが、酒田南の先発は渡辺ではなかった。だが、試合はロースコアのまま進んでいったので、これは「あるな……」と。案の定、6回に渡辺がブルペンに向かう。

 100キロ超の体重とはいえ、身長も191センチあり、均整はとれている。キャッチボールも見たが、下半身と上半身がうまく連動していて、自然な感じで体重が前に乗っていく。100キロ超の体重による不自由さみたいなものをまったく感じさせない。

 そして驚いたのは、ロッキングからピッチング練習を始めたことだ。ロッキングとは、あらかじめ自分のステップ幅に踏み込んでおいて、体重移動を意識しながら投げるという練習方法だ。股関節の可動域を意識して、下半身主導で、エネルギーロスなく投げられているのかを確かめるためのもので、とても有効な練習方法である。