河村勇輝がNBA関係者の注目が集まるGリーグ・ショーケースで躍動 好パフォーマンスで高まる存在感
河村はショーケースの2試合で平均21.0得点、8アシスト、5.5リバウンドをマーク photo by Getty Images
前編:河村勇輝 アメリカ挑戦2カ月後の思い
河村勇輝がアメリカでの挑戦を始めて約2カ月。NBAのコートに立ち、マイナーリーグのGリーグではチームを牽引するパフォーマンスで存在感を高めている。
12月下旬、多くのNBA関係者が集まるなかで行なわれるGリーグ・ウィンターショーケースの2試合においてはその印象を強めるプレーを見せたが、河村がどのように階段を上り、どのあたりまできているのか。
【人気選手から不可欠な存在へ】
「ユウキだろ? もちろん知っているよ。見ていて楽しい選手だね」
何人かの関係者からそんな言葉を続けて聞けば、河村勇輝の名がアメリカでも知れ渡ってきていることは、もう明白だった。12月22日までフロリダ州オーランドで行なわれたGリーグのウィンターショーケース。NBA全チームのエグゼクティブ、スカウトが好素材を探して集まる文字どおりの"品評会"でも、メンフィス・ハッスルの河村の知名度は高く、そして実際にコート上でも人一倍の輝きを放った。
同19日のウィンディシティ・ブルズ戦で約34分プレーした河村は、チーム最多の27得点、6アシスト(リバウンドは5)をマーク。コートサイドでは日本代表のコーリー・ゲインズアシスタントコーチ、パリ五輪でチームメイトでもあった富永啓生がコートサイドで見守る前で、そのパスセンスと稀有な得点への嗅覚は際立った。
「本当にすごかったですし、日本でやっていたままのプレーをしているなという感じはあります。彼はどこにいってもほかの4人の選手の特徴をわかっていて、どういうカットをしてくるのかもわかっている。そのへんはすごいなと思います」
とにかく仲がいい同い年の親友・富永がそう驚嘆していたが、実際にこの日のプレーを見た多くの関係者は、同じように日本のマジシャンに魅了されたのではないか。
23歳の河村がアメリカでのキャリアをスタートさせて、はや2カ月。メンフィス・グリズリーズとのエグジビット10契約で臨んだトレーニングキャンプでは、当初は10月10〜13日にはカットされてGリーグに行くことが規定路線だったという。それが確かな実力を誇示することでサバイバルを継続し、10月19日にツーウェイ契約を締結。同26日にはNBAデビューまで飾ってしまったのだから見事としか言いようがない。
この快進撃の過程で、河村は地元メンフィスを中心に大人気になった。Gリーグでもここまで6戦で平均13.5得点、10.8アシストと好成績。そのはつらつとしたプレーを見て、ハッスルのTC・スワースキー監督も「ユウキは(開幕当初よりも)さらに快適に感じ、アグレッシブにプレーしてくれている」と眼を細めていた。
インディアナ・マッドアンツでプレーする親友の富永がプレータイム確保に苦しんでいることからもわかる通り、Gリーグのレベルは、決して低いわけではない。そんななかで河村は、まずはアメリカのマイナーリーグではスター級の力を持っていることを証明してきた。このままいけば来年2月18日、サンフランシスコでNBAオールスターと同日に開催されるGリーグ・オールスターへの出場も、確実に違いない。
もっとも、こうしてGリーグでは好印象を残し続ける一方で、NBAでの河村はまだ立場を確立させたとは言えないのも、また事実である。世界最高のリーグのコートに立つという夢を実現させたが、今のところNBAでのプレータイムはまだ大差がついた終盤の時間帯に限られる。"ファン・フェイバリット(地元ファンの人気者)"ではあっても、"グリズリーズに不可欠な存在"ではないことは、河村自身が自覚していることでもある。
つづく
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう