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箱根駅伝2025 優秀な主務がいるチームは強い 創価大OB・吉田正城さんが箱根を通して学んだこと

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

創価大時代の吉田さん。2年時から3年間、主務を務めた。写真/本人提供創価大時代の吉田さん。2年時から3年間、主務を務めた。写真/本人提供

【マネージャーとしてスカウトされる】

 主務は、ある意味、チームの「なんでも屋」みたいなものだ。マネージャー陣の要としてチームの予定を考え、監督と選手の橋渡し役となり、広報や事務などで裏側から支える。どの監督も「主務がいないと成り立たない」と言うほど頼りにする存在で、大学陸上界では「優秀な主務がいるチームは強い」とも言われている。

 今年3月に創価大を卒業した吉田正城さんは、大学2年から4年までの3年間、主務としてチームを支えた。

「僕は高3の時、将来、主務として活動してほしいということで、マネージャーとしてスカウトされました。箱根駅伝という大きな舞台に関われるのはすごく貴重な経験になりますし、主務として携われるのは(本大会出場校の)20人ほどしかいません。すごく価値のあることだと思い、即答で決めました」

 高校の優秀なマネージャーを大学がスカウトするケースは、それほど多くはない。また、マネージャー陣のまとめ役であり、対外的な役割も担う主務の選出方法は大学によって異なる。2年から3年、3年から4年に進級する際、部内の設定タイムに届かない選手が転向したり、学年で話し合って選出するケースもある。通常は最上級生が務めることが多く、2年から主務になった吉田さんの場合はレアケースだが、それだけその手腕を高く評価されていたということだ。

 主務の仕事は多岐に渡る。

「(強度の高い)ポイント練習や大会、記録会に帯同しますし、取材対応や(選手の)エントリー、合宿の手配などもそうですね。三大駅伝(出雲、全日本、箱根)も帯同し、全体の流れの指示を出したり、榎木(和貴)監督のサポートをさせていただきました。監督の考えを選手に噛み砕いて説明することも重要な仕事です。監督の言うことは理にかなっているのですが、なかにはそれをなかなか飲みこめない選手もいます。そういう時は、監督に『すいません。ここは譲れないそうです』と伝え、双方の言うことが通らないということがないように調整していました」

 監督と選手の間に入り、交通整理をするのは労力的にも精神的にもタフさが求められるが、うまくいかない時はキャプテンに相談するなどしてまとめた。

「主務をやらせていただいた3年間では、4年の時が一番悩みましたね」

 2、3年時は先輩がいるなか、気を遣いながら実務をこなす大変さがあったが、4年の時は種類の異なる難しい問題に直面した。

「4年の選手の記録が伸び悩んだ時期があったんです。自分たちの代は、創価大で箱根シード権獲得というのを目指して入ってきたのですが、1年生は(2021年の)箱根で準優勝をしたのを見て、優勝を目指して入学してきた。目標が違うし、持ちタイムも下級生のほうが平均的に高いので、いい意味で下からの突き上げがあったんですけど、4年生の記録が伸びないので、監督から『4年はダメだ』と言われ続けたんです。監督の言葉が厳しくて、ちょっと溝ができたこともあったのですが、そこをどう解消していくのか。すごく悩みました」

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著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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