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大谷翔平の獲得後もドジャースがクラブハウスを重要視する理由 スタジアム1億ドル改修の責任者にインタビュー

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

ドジャースタジアムの改修責任者のスミス氏 photo by Okuda Hidekiドジャースタジアムの改修責任者のスミス氏 photo by Okuda Hideki

第2回/全4回:ドジャースタジアム大型改修の目的と背景

26年ぶりの世界一に輝いたロサンゼルス・ドジャースがこのオフ、1億ドル(150億円)の資金を投入して本拠地・ドジャースタジアムの改修を行なっている。

大谷翔平をはじめ一流の選手たちが求める最高の環境整備を行なうことが目的だが、メジャーでも屈指の高額年俸を誇るドジャースがなぜ、巨額の施設投資を行なうのか。

ドジャースタジアムの改修責任者、ジャネット・マリー・スミス氏に話を聞いた。

第1回〉〉〉ドジャースタジアム1億ドル改修に踏み切る背景と必要性

【12年ぶりのクラブハウス大型整備の理由】

 ドジャースタジアムの改修では、三塁ベース付近からファウルポールまで、スタンド側が深く掘り返されているのが確認できるが、なぜ、深く掘るのか。7月にドジャースの執行役員副社長で、球場のデザインや改築を担当するジャネット・マリー・スミス氏にインタビューをした。

 スミス氏は、1992年に開場したボルティモア・オリオールズのカムデンヤードでレトロクラシック調の球場デザインを手がけ、大きな注目を集めたデザイナーだ。これを機に、20世紀初頭を彷彿とさせる美しい懐古調の球場が全米各地で次々に誕生するきっかけを作った。その後、2002年からはボストンのフェンウェイ・パークの10年にわたる大規模リフォームを主導し、これも高い評価を受けた。そして2012年、ドジャースに招聘され、再び球場の改修プロジェクトに取り組んでいる。

 1962年に開場したドジャースタジアムはメジャーで3番目に古い。初仕事は2012年のオフでロッカールーム、ウエイトルーム、室内バッティングケージの改修を行なった。しかし、工事は決して簡単ではなかった。その理由は、ドジャースタジアムが平坦な土地ではなく、チャベス渓谷の谷間に建てられていたからである。

 スミス氏は、その理由を次のように説明する。

「12年前、『クラブハウスは1962年のままで止まっている、いいことではない』と、オーナーから注文を受けました。問題は球場の立地にあり、ホームから内野側は丘陵の斜面部分にあたり、固い岩に阻まれてクラブハウスを外側に拡張する方法が取れなかったんです。そのため、別のアイデアを実行に移しました。内野スタンドのフィールドレベルにある黄色いシートを取り外し、その下の地面を掘り下げることで、クラブハウスの床面積を倍増させることにしました。作業が終わったあと、その上に再びシートを戻し、元どおりにしました。

 オフシーズン中にすべてを完了させなければならず、ハラハラドキドキの作業でしたが、おかげでとても大きなクラブハウスができて、これで十分だと当時は思いました。

 しかしながらあれから12年たった今、それでも足りなくなった。もっとクラブハウスを広げる必要があり、また同じようにシートを取り外し、地下をさらに掘り下げ、床面積を広げることになると思います」

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著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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