【男子ゴルフ】「10cmのパットにしびれた」石川遼が2年ぶりの優勝で気づいたこと

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

苦しい期間を乗り越えて、節目となるツアー通算10勝目を挙げた石川遼。苦しい期間を乗り越えて、節目となるツアー通算10勝目を挙げた石川遼。 三井住友VISA太平洋マスターズで、2010年の同大会以来となる2年ぶりのツアー優勝(通算10勝目)を遂げた石川遼は、優勝後のスピーチでも、あるいは会見でも、赤く染まった目を照れ笑いで隠そうとしていた。

 石川が泣いたのはこれが初めてではない。高校1年生の初優勝とき(2007年マンシングウェアオープンKSBカップ)も、杉並学院高の2年先輩・薗田峻輔とプレイオフを争って制した2010年フジサンケイクラシックのときも、石川の目には光るものがあった。だが、この日の涙はそういう歓喜の涙ではなく、背負い続けてきた重圧からようやく解き放たれ、新たな一歩を踏み出したことに対する、こらえようのない安堵の涙だった。

 優勝のなかった2年間は「苦しかった」。そして「いろんなことがあった」と石川は振り返った。

「単に練習していれば自然とゴルフがうまくなるものと思っていましたけど、勝てないことでそれだけではいけないのかな、と思うこともありました......うん、でもやっぱり、練習をずっと続けてきたから、今日勝てたのだと思います。とはいえ、ラウンドしながら『今日もダメかな』と思う自分がいました。優勝の感覚を完全に忘れていて、『優勝ってどうやってするんだっけ?』と思っている自分がいたので、今は不思議な感じがします。(前回の優勝から)2年間は本当に長かった。今シーズンも2週連続で予選落ちしたことがあったけど、(一番つらかったのは)意外に今日かもしれません」

 とりわけ言葉を詰まらせたのは、ずっと側で支えられてきた『チーム遼』のことや、試行錯誤の日々の話題になったときだった。

「勝てない日々は『チーム遼』のみんなも悔しかったと思う。みんなはボールを打てない分、僕を懸命にサポートしてくれた。感謝の言葉しかありません。苦しい期間は、かっこつけていると思われるかもしれないし、自分でもそう思うんですけど、もがいているとか、勝てなくて悩んでいるとか、そういうふうに見られたくなかったんです。へへへ。(今日の優勝も)苦しみの勝利ではなく、『チョロいもんだった』と書いておいてください(笑)」

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