番記者が振り返る羽生結弦の五輪連覇。あらためて感じた王者の強さ (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

 冷静に自分のコンディションを判断した羽生は、SPでは4回転をサルコウとトーループにして、完璧な滑りで111.68点を獲得。2位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)に4.1点差をつけて首位発進に成功した。

 その滑りは、すべてがコントロールされていた。ジャンプは入るスピードまでしっかり計算されて、力みを一切感じさせないきれいなもの。羽生はそのジャンプについてこう語った。

「サルコウは朝の練習の曲かけで失敗していたので若干の不安はありましたが、自分の体が覚えてくれていると思った。アクセルもトーループもサルコウも、何年間もずっと一緒に付き合ってくれたジャンプなので、そういった意味では感謝をしながら跳んでいました」

 最小限の出力で確実に跳ぶジャンプ。ケガをしている右足で着氷するからこそ、正確なポジションで降りて足首に負担をかけない丁寧なジャンプ。それをギリギリまで追い込まれた大舞台でやり遂げたことに、羽生の精神力の強さをあらためて感じた。一分の隙も無い、完璧な演技だった。

 翌日のフリーのジャンプ構成は、4回転はサルコウとトーループを2本ずつ、トリプルアクセルは1本。最初の4回転サルコウと4回転トーループをSPと同じように丁寧に跳び、ともにGOE(出来ばえ点)を3点もらう出来にした。

 後半、4回転サルコウ+3回転トーループはきれいに降りたものの、次の4回転トーループは着氷が乱れて連続ジャンプにできなかった。だが、次のトリプルアクセルに1回転ループと3回転サルコウを付けてリカバリー。最後の3回転ルッツの着氷を耐えきって206.17点を獲得し、合計317.85点で五輪連覇を決めた。

平昌五輪で金メダルを獲得。連覇を達成した平昌五輪で金メダルを獲得。連覇を達成した「6分間練習でサルコウが不安だったので、とにかくサルコウさえ降りれば前半の感覚で後半も跳べると思っていました。最後のルッツは今の右足では跳ぶのが一番大変なジャンプだったので、本当に右足が頑張ってくれたなという感じでした。演技が終わった瞬間は勝ったと思いました。ソチ五輪の時は『勝てるかな?』という不安しかなかったけど、今回は何より自分に勝てたなと思いました」

 こう振り返った羽生は、このプログラム構成を朝の公式練習の前に自分で決めていた。SPは世界最高得点とはいかなかったが、ジャッジに高い評価をしてもらえたことで自分のスケートに自信を持てたからこその決断だった。

 のちに羽生は、次のように明かしている。

「自己最高は330.43点だけど、あれは奇跡的なことに近いし、アベレージじゃない。それに4回転はきれいに降りたのと転倒したのでは6~7点違うから、1本転倒しただけで330点には届かない。だから平昌では、310~320点を出せば勝てると計算していた」

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