日本水泳陣のパリ五輪メダル獲得は危機的状況 「大黒柱」不在でチーム意識のゆるみも感じた

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

 7月23日から行なわれた世界水泳福岡大会の競泳競技。メダル獲得は男子400個人メドレーの瀬戸大也(CHARIS&Co.)と、男子200mバタフライの本多灯(日大/イトマン東京)の銅メダル2個のみ。2005年モントリオール大会の9個を最多とし、1998年パース大会以来4個以上のメダルを獲得し続けていた日本が、それを下回る結果に終わった。

明るい性格で日本チームを牽引する力に期待がかかる本多灯明るい性格で日本チームを牽引する力に期待がかかる本多灯 決勝進出は男子が6種目のべ7人で、女子は6種目のべ6人。リレーも8種目中5種目が決勝進出。日本チームの横山貴ヘッドコーチは「日本選手の出場はリレーを1として、2名出場を2と計算すると57レース出場となりますが、そのなかで決勝に進出したのは18で、進出率は約30%。出場18名で少数精鋭だった前回のブダペスト大会の決勝進出率が45%だったのと比較すると低く、世界の成長を実感させられる大会になった」と総括した。

 銀2銅2を獲得したブダペスト大会を見れば、メダルは逃したが4位や5位に食い込んで肉薄した選手が4人いたが、今回はメダル以外の決勝の成績で、それに匹敵するのは女子200mバタフライ5位の三井愛梨(法政大・横浜サクラ)のみで、それ以外は男女のメドレーリレーを含めて6位以下と「惜しい」と言えないレースばかりだった。

 さらに大会を通じて自己記録を出したのも、女子は32歳の鈴木聡美(ミキハウス/50m、100m平泳ぎ)と28歳の高橋美紀(林テレンプ/50m背泳ぎ)のベテラン勢のみで、男子は柳川大樹(明治大・イトマン港北/200m背泳ぎ)と小方颯(日本大・イトマン港北/200m個人メドレー)、眞野秀成(セントラルスポーツ/800mフリーリレー1泳者)のみと寂しい状況。

 危機感を持って挑んだリレーも、男女のメドレーリレーはともに6位と健闘したものの、男子のフリーリレー2種目と女子800mリレーの五輪種目では決勝に進めなかった。

 一方これは予想されていた結果でもあった。4月の日本選手権でリレー要員を含めて40人の代表が選出されたが、従来の世界選手権派遣条件だった標準Ⅲ以上の記録を突破したのは、男女9種目10人のみで、他はパリ五輪参加標準記録や、福岡大会参加標準記録突破での選出。五輪代表条件の派遣Ⅱ突破となれば、7種目6人(のべ9人)という結果だった。

 じっくりと準備ができ、環境にも慣れている地元開催だったにもかかわらず、4月の日本選手権よりタイムを落とす選手が多かったことを、横山コーチはこう分析する。

「これまでずっと無観客の試合を経験していた選手たちが、満員の観客や歓声に圧倒されてしまったということもありますが、選手40名のうちには明確に次のパリ五輪を目指して自ら高地トレーニングを志願したり、ヨーロッパグランプリ参戦を経験して今回も自己ベストではなくても決勝に進出した選手もいる。そういう選手たちと、福岡に出るのが最優先だった選手たちが2極化してしまったのはあると思う。ゴールデンウィークにフリーリレーの合宿をやった時にかなり危機感を感じましたが、ここ2年はコロナの関係で個別の強化が主になってしまったので、集団での合宿も必要だったと考えています」

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