日本水泳陣のパリ五輪メダル獲得は危機的状況 「大黒柱」不在でチーム意識のゆるみも感じた (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

 新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪が1年延期され、世界水泳福岡大会も当初の2021年開催が2022年開催に変更。さらに2023年開催とズレてしまったという難しい状況でもあった。それを踏まえて今の日本水泳の状況を平井伯昌パリ五輪プロジェクトリーダーはこう説明する。

「本来の五輪サイクルであれば、翌年の世界選手権は若手が入ってくることを願って大人数にし、中間年には予選に何人も出せるパンパシやアジア大会を経験させ、五輪前年は派遣標準を高くして選手を絞っていく形でした。しかし、それがコロナの影響でできなかった今回は、五輪前年にもかかわらず多人数のチームになった。派遣標準Ⅲを切った選手が10人しかいなかったのでメダル獲得も決勝進出も少ないだろうと予想はしていたし、来年へ向けては相当に頑張らなければいけない状況だと感じました」

 また、ナショナルチームとしての活動の少なさも今回の結果につながった要因だと平井リーダは話す。

「今回は代表決定直後の一次合宿をやったあとは、担当する選手を連れてのヨーロッパ遠征や東京都選手権出場はありましたが、そのあとの(全体の)合宿は大会直前の1回だけ。東京五輪の前も、担当ごとの強化という形になり、ああいった結果につながったのだろうと反省しましたが、今回もその反省を生かせなかったのが要因のひとつだと思います」

 2016年リオデジャネイロ五輪後は、当時はコーチとマンツーマンの選手が多かったこともあり、2017年の下期にはナショナルチームを解散しないで強化を継続しようと、シエラネバタ合宿に行くなどの取り組みをした。その成果のひとつが2019年世界水泳の金2銀2銅2だった。

「今年は9月下旬にアジア大会があるので、そこに向けてチームで強化することができます。そのあとに日本代表を解散して各クラブで強化するとなると期間が短くなるので、ナショナルチームで強化を利用しながら3月の日本選手権に向かっていくという計画をうまくやらないと難しいかなと思います」

 平井リーダーはこう提案するが、今は資金的に難しい面もあり、どこまでできるかわからないところもある。ただ、パリ五輪まで1年を切ったなかで、やれることは最大限やっていかなければ、ここからレベルアップはないだろう。

 そんな状況のなかでも個々を見れば、瀬戸大也を指導する加藤健志コーチが「瀬戸と一緒に行動した柳田と小方が自己新を出して決勝に進出したが、それは瀬戸が『一緒にやろう』という形で引っ張っていってくれたからだ」と話すように、成果もあった。

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