10球団のスカウトが集結。金沢星稜大・泉圭輔は実績ナシでも逸材だ

  • 高木遊●文・写真 text&photo by Takagi Yu

 8月19日、青山学院大グラウンド。バックネット裏のスタンドには10球団、約30人ものスカウトで埋まっていた。お目当ては金沢星稜大の187センチ右腕・泉圭輔(4年)だ。甲子園出場はおろか、これまでの野球人生で全国大会に出たのは小学5年の時に一度だけあるが、控え選手で試合には出場していない。

 対戦した青山学院大の打線には甲子園経験者がずらりと並んでいたが、そこで泉は5回を1安打無失点の快投を見せた。これには視察していたスカウトも「一世一代の投球でしたよ」と話したほど、強烈なインパクトを残した。

柔軟性と長身を生かした投球が持ち味の泉圭輔。金沢星稜大から初のドラフト指名なるか柔軟性と長身を生かした投球が持ち味の泉圭輔。金沢星稜大から初のドラフト指名なるか それから約1カ月後の北陸大学野球秋季リーグ第3週、会場となった石川県加賀市中央運動公園野球場には8球団、14人のスカウトが訪れた。すでに他大学の秋季リーグ戦はもちろん、高校野球の秋季大会が始まっているにもかかわらず、泉を最優先するスカウトが多かった。

 体全体から柔軟性を感じるフォームと、長身を生かした角度あるボール。140キロ台のストレート(最速146キロ)に加え、左打者の外角に逃げるように落ちるツーシームで相手打者を打ち取っていく投球は、誰もが"逸材"と認めるところだ。

 味方のミスでピンチを招く場面もあったが、泉は表情を変えることなく淡々と投げ込んでいく。スコアボードには0が並んでいった。バント処理でも長身投手にありがちな粗さはなく、三塁で走者を刺す場面もあった。

 結局、味方の援護なく11回裏にサヨナラ負けを喫したが、153球を投げて8安打1失点。三振は2つと少なかったが、持ち味の打たせて取る投球を披露した。

 視察に訪れていたスカウトたちからは、高い評価のコメントが多く聞かれた。

「まだピンポイントに投げるという感じではありませんが、制球に困ることはなさそう。体はまだできていませんが、球を扱うセンスがいいですよね」

「高校時代から投げ方がよく、柔らかかった。即戦力ではありませんが、1年間しっかり練習して鍛えれば、上(一軍)でも使えるようになりそうです」

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