二浪→BC。ドラフト候補・安河内駿介は速球とつぶやきで存在感を放つ

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

<俺より凄いピッチャーは日本のアマチュア、独立リーグに沢山いる。

だけど2年間無所属、5年ぶりの試合で150キロ超、俺以上に色んな道を通ってきた「華」のある選手いる? いないね。

魅力も話題性も俺がドラフト候補No.1でしょ>

 ツイッター上でそんな「つぶやき」が発信されたのは、2018年7月20日のことだった。扇情的な文面も手伝ってか、このツイートは200件近いリツイートを受けて拡散された。

「まぁ、炎上商法ですよね」

 そう言って笑ったのは発信した本人、安河内駿介(やすこうち・しゅんすけ)である。BCリーグ・武蔵ヒートベアーズに所属する24歳の投手だ。 今年、BCリーグでもっともNPBに近い選手と言われている。

最速151キロを誇るBCリーグ・武蔵ヒートベアーズの安河内駿介最速151キロを誇るBCリーグ・武蔵ヒートベアーズの安河内駿介 発信した文面から刺々しい人柄を想像していたが、実際に会ってみると意外にも爽やかな笑顔が印象的な好青年だった。安河内は苦笑しながら、ツイートに至るまでの経緯を明かしてくれた。

「チームがずっと連敗していて(最終的に13連敗を喫する)、スタンドには常連のファンしかいないような状態でした。『やばい、このままじゃチームがなくなるんじゃないか?』と危機感を抱いて、何か話題を作らないといけないと思ったんです」

 そこで思いついたのが、自身の珍しい球歴をネタにすることだった。

「高校は3番手投手でしたし、大学では3年春以降はケガをして投げていない。その後は2年も浪人して、独立リーグ1年目で150キロを超える......。かなりストーリー性がありますよね(笑)。自分やヒートベアーズを知ってもらうために、これを生かさない手はないと思いました」

 自身が「炎上商法」と言うように批判を浴びることは覚悟の上だったが、意外にも否定的な反応は少なく、むしろ応援の声が大半だった。球場を訪れるファンの数も増え、安河内は自身の戦略に手応えをつかみ始める。

 続いて安河内が手がけたのは、オリジナルTシャツの販売だった。球団未公認のため球団ロゴマークは使えず、自費制作だったが、プリントした100枚が完売。安河内は「球団スタッフの人も買ってくれました」と笑う。

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