F1ホンダのホンネ。真の問題は「信頼性じゃなく、コースで遅いこと」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 では、マクラーレン・ホンダに速さがないのは、どうしてか?

 開幕戦仕様のベースとなるパワーユニットが持ち込まれたテスト6日目の3月8日、アロンソがパワー不足に怒りを爆発させた一方で、現場のエンジニアたちも戸惑いを隠せないでいた。実際にコースを走らせてみると、新型パワーユニット『RA617H』はシミュレーションやベンチテストの結果をもとに聞かされていた性能値と比べても、低いパワーしか生み出してくれなかったからだ。

 その理由は、RA617HのICEに盛り込まれた新技術にあった。

「本当にまったく新しい燃焼形態になっていますから、まだわかっていないことがいっぱいありました」

 長谷川総責任者はその技術の詳細を明かそうとはしないが、メルセデスAMGやフェラーリが実用化していると言われるHCCI(予混合圧縮着火)に似たジェットイグニッション技術をホンダも導入してきたものと見られている。

 その技術は、通常の燃焼室内での燃料噴射と着火による爆発ではなく、燃焼室に付随する予備燃焼室ともいうべき小さな空間で着火し、その勢いで燃焼室全体に爆発を引き起こすというもの。こうすることで、通常の燃焼とは比べものにならないほど薄い空燃費で効率的な燃焼を起こすことができ、100kg/h以下という燃料流量に統一されたなかでは燃費が良い=出力が高いということになるのだ。

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