川崎フロンターレが獲得した「ファン・ウェルメスケルケン際」とは、どんなプレーヤーなのか? (4ページ目)

  • 中田 徹●取材・文 text by Nakata Toru

【U-23日本代表時代の後悔がプレーのベース】

 ドルトレヒトのトップチームに昇格してから2シーズン、オランダ2部リーグで62試合プレーした際は、サポーターからチームのマスコットのように親しまれた。2年目のシーズン、ドルトレヒトは2部リーグ20チーム中19位という体たらくな状況だったが、際はチームの最優秀選手に選ばれるほど成長し、オランダ内外からオファーが相次いだ。

 2017-18シーズン、際はオランダ2部リーグ上位のカンブールへ移籍。コーチから「勉強しているの?」と訊かれたので「日本からドルトレヒトに来て、通信制大学に2年通って、スポーツマネジメントを勉強していました」と答えると、「やっぱりね」と言われた。

「際は新しいフォーメーション、戦術、初めてやる練習でも理解が早い。だから、見るだけですぐ察知してできる。それはしっかり勉強してきた基礎があるから。際を見ていると、そのことがなんとなくわかる」

 この時、際は「勉強は絶対に生きている」と思ったという。際にとってサッカーは勉強の息抜きではなく、勉強がサッカーの息抜きなのである。そのことは、異国の地でのサッカー人生で、自分で考え答えを導き出すことにつながった。

 ボールを持った時の自信──。それが際のプレーのベースとなっている。

 リオオリンピック直前でU-23日本代表に入った時、当時の際にはそのストロングポイントが失われていた。それというのも、ドルトレヒトでウインガーからサイドバックに転向してまだ1年ほどで、「DFとして安全にプレーしよう」という思いが強く、バックパスばかりでうしろ向きのプレーが多かった。

 この時の反省を活かし、際はSBの位置から縦ばかりでなく、中盤に上がってからサイドにパスを振ったり、そのままアタッキングゾーンに攻め上がったり、ビルドアップのバリエーションを増やす役割を果たしたり、どんどんプレーの幅を広げていった。そのことが、のちのオランダ2部リーグでのベストイレブン受賞、オランダ1部リーグのPECズヴォレ、カンブール、NECでの息の長い選手生活につながっている。

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