川崎フロンターレが獲得した「ファン・ウェルメスケルケン際」とは、どんなプレーヤーなのか? (3ページ目)

  • 中田 徹●取材・文 text by Nakata Toru

【センター試験の失敗をきっかけに再びオランダへ】

 そして10年後の2023年10月末、際はNECと今シーズンの契約を結んだ。しかし、両者の間では『冬の移籍市場で退団する』というコンセンサスがあったようだ。

 1月21日、NECの公式ウェブサイトは「ファン・ウェルメスケルケン際は川崎フロンターレに移籍します。彼がNECと結んだ契約のなかに『日本のクラブからのオファーがあった場合、自由契約扱いで移籍できる』という条項が盛り込まれていました」と発表した。

 ドルトレヒトでスタートし、NECでひと区切りを迎えた際のオランダ挑戦は、決して忘れられない12歳の夏の思い出を叶えたものだった。

 2015-16シーズンのウインターブレイク前のこと。私は年末年始を日本で過ごすことを際に告げ、「なにか日本で欲しい物があったら買ってくるから遠慮しないで」と言った。

「重くなって申し訳ないんですが、『NASAに学ぶ英語論文・レポートの書き方』『はじめての英語論文』をお願いできませんでしょうか」

 際はセンター試験(現・大学入学共通テスト)に失敗したことで、オランダでサッカーをする夢を叶えた選手だった。

 彼が通った甲陵中、甲陵高は山梨県内屈指の進学校。際も文武両道に励む青春を過ごしていた。目指していたのは関東の国立大学。しかし、オランダでプロサッカー選手になる夢も捨てがたい。

「受験は志望校ひとつのみ。浪人はしない。そこを落ちたらオランダに行く」

 センター試験の英語科目で、際はマークシートの答え記入枠をひとつずつずれて書いてしまうミスをした。緊張だったのか、単なるケアレスミスだったのか......。ともかく彼はオランダに渡り、サッカーだけでなく通信大学に通いながらスポーツビジネスを学んで文武両道を極めようとした。

 かつて際とのインタビューでは、ドルトレヒトのPL(損益計算書)からクラブの経営を分析した話も出た。「ドルトレヒトは小クラブなので、みんな事務作業で手一杯。本当に人が足りないが、全員ほかの部署のことができるので、お互いをサポートできる。そこがこのクラブの強みです」と結論づけていた。

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