セ・リーグ最強「新・赤ヘル打線」はいかにして完成したのか? (3ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 振り出す前に一度ヒッチする形は、キャンプ中に行なっていた球場を一周しながら素振りするメニューからヒントを得たものだ。

「間を取れるというのもありますけど、タイミングを取るのにもよかった」

 頼れる同学年の2人が後ろにいることで、1番を任された田中の負担も減った。強心臓の性格も1番という打順に向いていたのかもしれない。特に1回の打席は35打数17安打で打率.486を誇り、まさに好調打線の火付け役となっている。

 ルナが4月17日に故障で離脱しても、攻撃力は落ちない。代わりに2000安打を達成した新井貴浩が4番に座り、得点圏打率リーグトップの勝負強い打撃で得点源となっている。新井はバットだけでなく、打席での姿勢がチームに好影響を与えている。

「打つだけでなく、粘って四球を選ぶ姿勢には後ろを打つ選手たちも感じるものがあるはず」と石井打撃コーチ。ベテランの姿が若い選手の見本となる。ここでも相乗効果は見られる。

 打順別の打率を見ると、1、2、5、7番が3割を超え、3、4番も.290以上の成績を残す。勝負どころでの一打に欠いた昨季のひ弱な打線の姿はもうない。すでに逆転勝利は(21勝中)13試合を数える。切れ目のない打線が、リーグトップの得点力につながっている。
 
 若い鈴木誠也や安部友裕らも好調な打線の流れに乗って好結果を出し始め、開幕時不振だった松山竜平や小窪哲也という代打の切り札にもなる選手も復調の気配がある。好スタートによって、相乗効果の連鎖が生じている広島打線の勢いは、まだまだ衰えそうにない。

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